荒木飛呂彦『死刑執行中脱獄進行中』 | 私の耳は底ぢから

荒木飛呂彦『死刑執行中脱獄進行中』

荒木 飛呂彦
死刑執行中脱獄進行中―荒木飛呂彦短編集

お勧め度:★★☆☆☆

(ジョジョオタのみ★5つ)


ジャンプ漫画「ジョジョの奇妙な冒険」であまりに

も有名な荒木飛呂彦の、2冊目の短編集。

ジョジョという漫画は、好きな人と嫌いな人にはっ

きり分かれ、「絵がキモくて受け入れられない」と

いう人が多いようだ。確かに、細部まで書き込まれ

た背景、登場人物のホモみたいな服装や顔立ち、

作中の端々に登場するありえないファイティング

ポーズ(通称ジョジョ立ち )などが頻発する作風

は、読む人を選ぶだろう。しかし、熱い能力バトル、

小粋なギャグ、山田風太郎、ドラえもん、筒井康

隆など様々な作品をパク……オマージュした世界

観などが支持され、島流し にあいながらも続編の

連載が現在まで連綿と続いている。

さて、そんな荒木氏の短編集だ。帯の煽りが「荒木

飛呂彦の世界ィィイイイイ! 」となっているのが笑わ

せる。

この作品集は、

「死刑執行中脱獄進行中」

「ドルチ」

「岸辺露伴は動かない」

「デッドマンズQ」

という4つの短編から成っている。

表題作「死刑執行中脱獄進行中」は、死刑を宣告

された犯罪者がじわじわ処刑されていく話。白眉

である。

「ドルチ」は遭難した船の上で、猫と飼い主が死闘

を繰り広げる話。漱石枕流である。

「岸辺露伴は動かない」は、ジョジョに登場する人気

キャラクター、岸部露伴のスピンオフ作品。

だが断る

漫画家の露伴がイタリアに取材旅行に行き、教会の

懺悔室で怨霊に取り付かれた男の話を聞く……という

サイコホラーだ。この漫画の中で露伴はストーリーテ

ラー、つまり世にも奇妙な物語のタモさんの位置にいる。

私は露伴が悪人をネチネチと追い詰めていくような話

を期待していたので、正直拍子抜けした。話自体も地味

な感じだし。


「デッドマンズQ」

これまたジョジョの人気キャラクター、吉良吉影のスピン

オフ作品。本編であっけない最期を遂げた悪人、吉良吉

影の死後の世界を重厚に描く。

前世の記憶を失った吉良は、天国にも地獄にも行かずに

現世でぶらぶらしている。ときどき依頼を受けて、厄介な

人間を殺しにいったりする。

この作品の中では、例えば他人の家に入るときも、いちい

ち住人の許可を得なければいけないなど、幽霊といえども

いろいろな制約があるという設定になっているのが面白い。


以上、悪くない短編集だが、これで定価1200円はちょっと

高すぎるよ。私は古本で買ったんだが。装丁も無駄に豪華

だし。