東国山人の鳥日記 -32ページ目

東国山人の鳥日記

山人とは世捨て人のこと。世捨て老夫婦が集めた鳥たちの行動記録で、週2回程度更新します。基本スタンスは
(1)日常の中から一瞬の非日常を見つけ、シャッターを押す。
(2)ある時は科学的に、またある時は非科学的に、それでいて尤もらしく、即ちファンタジー風に。

大木の高い所で美声を響かせていた雄。次第に降りて来て、地上4、5m上の所まで来ると、そこで止まって一層激しく鳴きだした。何事かとあたりを見廻すと・・

下方に雌がいた。そうか、雄の攻勢はここまで、後は雌の反応に任すのか。

暫くすると雄の鳴き声はぴたりと止まった。目は口ほどに物を言う。この距離では最早声は必要ないようだ。

(ウインクする雌)

雌からウインクを引き出したことが決定打。雄は雌が変心しないうちにと自分の棲み家に雌を誘う。

ここまで来て突然鳥の姿がファインダーから消えた。秘め事を隠したくなるのは人も鳥も同じこと。この後2人は最後の一線をどう超えたのだろうか。               

 

  君や来(こ)し われやゆきけむ おもほえず 夢かうつつか 寝てかさめてか

  (忍び込んだのはあなただよ、私じゃないよ。いや、何を言っているんだろう、気が動転してしまって・・)

伊勢神宮の斎宮(巫女)が、そこに滞在した男の寝所に忍び込む。伊勢物語のなかで伊勢が出てくるのはここだけだが、それを標題にしたと言うことは、作者の思い入れの最も強い場面だからなのだろう、その場面を斎宮が詠んだ歌だ。発展家の雌のことだから多分こんなことかなと想像しながら、ふとこの歌を思い出した。    

      撮影場所  神奈川県・早戸川林道2017年(4月)  撮影  S・植木