大木の高い所で美声を響かせていた雄。次第に降りて来て、地上4、5m上の所まで来ると、そこで止まって一層激しく鳴きだした。何事かとあたりを見廻すと・・
下方に雌がいた。そうか、雄の攻勢はここまで、後は雌の反応に任すのか。
暫くすると雄の鳴き声はぴたりと止まった。目は口ほどに物を言う。この距離では最早声は必要ないようだ。
(ウインクする雌)
雌からウインクを引き出したことが決定打。雄は雌が変心しないうちにと自分の棲み家に雌を誘う。
ここまで来て突然鳥の姿がファインダーから消えた。秘め事を隠したくなるのは人も鳥も同じこと。この後2人は最後の一線をどう超えたのだろうか。
君や来(こ)し われやゆきけむ おもほえず 夢かうつつか 寝てかさめてか
(忍び込んだのはあなただよ、私じゃないよ。いや、何を言っているんだろう、気が動転してしまって・・)
伊勢神宮の斎宮(巫女)が、そこに滞在した男の寝所に忍び込む。伊勢物語のなかで伊勢が出てくるのはここだけだが、それを標題にしたと言うことは、作者の思い入れの最も強い場面だからなのだろう、その場面を斎宮が詠んだ歌だ。発展家の雌のことだから多分こんなことかなと想像しながら、ふとこの歌を思い出した。
撮影場所 神奈川県・早戸川林道2017年(4月) 撮影 S・植木








