「僕の小規模な生活(1)」

福満しげゆきさんの漫画は面白い。ほんと面白い。大好き。
本当に小さくどうでもよい日々をそのまんま描いています。
10Pのエロマンガ連載を貰えて収入源に喜び、5回で連載が打ち切られ「働きたくない!」と落ち込む。
溢れ出るガロ臭、私小説臭。
小さくせせこましい人間である私はこういう小規模なものに心底共感を覚えます。
小さな人は無害で素晴らしい。

みんなが背中を丸めて小さくなり、他人の顔色を伺いながら肩と肩がぶつからないように生きる性質の人間なら世の中に戦争なんて起きないだろう。
なんていうのはジョークであり、同時に理想論であります。
理想論とは高度なジョークなのであります。


私の中にも、大金持ちになって新宿のタワーマンション上層階で猫を飼いながら天蓋ベッドで寝る優雅な生活に憧れる気持ちはあります。
何の苦労もなくそれが実現できるならホイホイ乗ります。欲望バンザイ!
けど実際、成功するにはそれ相応の犠牲が要るものです。
たまたま生まれた時代や家系に恵まれた人以外、高い報酬には高い犠牲(努力とか努力とか)が必須な訳で。

知人に死ぬほど働いて人より速く多く成果を挙げ、社会的地位も収入も高い人がいますが、案の定というか家庭は崩壊しています。
本人もそれを意に介さない様子。根っから「仕事が恋人」の人なんです。Work is life!!
その人にとっては家庭を持つ事も「立派な社会人」としてのパフォーマンスの1つ。
家庭が崩壊したところで、結婚し所帯を持ち、地位も収入も高い立派な自分って体裁が保ててる分には何の支障もないんです。(割とよく聞く話ではある)

奥さんや子供が彼を単なるATMと割り切っているならWIN-WINですし、ある意味対等なので何の問題もないと思うのですが、
家族としての愛情を求めているならこれ以上ない気の毒な事と思います。
同時に、高い報酬を得る為には高い犠牲が必要なんだよなとしみじみ思います。
家族の心を踏みにじる事を努力といっていいのかはわからないですが、努力って言葉は非常に便利で様々なものを内包してくれますので。

そんな現実を踏まえ、私は小規模でも好きなことをやって楽しくせせこましくスーパーの半額に感謝しながら生きる生活を送りたいと思ってしまうのです。半額バンザイ!!
私が犠牲を払わず大金持ちライフを満喫する手段は宝くじくらいしかないと思うので、今日も慎ましく宝くじを3枚購入致します。
現実が既に非現実的。

「なぜノーマ・ジーンはマリリン・モンローを殺したか」
この本も、多大な成功には多大な犠牲がつきものとよく表しています。
死後も知らない人はいないくらい有名で、巨大な銅像を建てられ騒がれ、愛され続けるマリリン。
けど彼女の生涯と常に付き纏う苦悩を見たら、安易に「ああなりたい」と言える人は少ないんじゃないだろうか。
マリリンが36歳で生涯を終えるまでどのような苦悩を抱えていたか、スーパースターマリリンが生まれる過程は、自ら死に向かった理由は?
彼女の精神を徹底的に分析した本。非常に現実的な内容です。
現実的ゆえに救いがなく、残酷です。

やっぱり私は福満さんのような小さい範囲で小さい生活を営みたいです。
小さい人間なので。なので仕事下さい。