一週間ほど前、僕がとてもお世話になっている団体、ISAWO BOOKSTOREの公演が千秋楽を迎えた。その芝居の題名は『夜明け前』である。僕が弟子としてくっ付いている、高橋いさをさんは初日の稽古で「演出ノート」というのを必ず配る。僕も初日にノートを配るのは完全にいさをさんからその有益さを学んだからだ。そこには作品のことはもちろん、いさをさんの表現方法や思考なども書かれている。今回のノートにこのような言葉が書かれていた。

 『夜明け前が1番暗い』

 この言葉を聞いて、僕は猛烈に感心した。この言葉はただ単に、自然界の現象を表しているだけの言葉ではない。これには人生の苦悩と成功も現れていると思うのだ。夜明けが来るまでは長い。夜明け近くになるにつれて外は特に暗くなり、寒くもなる。しかし、必ず夜は明け、日は昇る。太陽が昇ると、外は一気に明るくなり、暖かくなる。何人かの人はその瞬間を待てずに見るのを諦め、寝てしまう。その先に暖かさと美しさがあるにも関わらず…。
 全く人生もこれと等しく表せると思う。成功までの道のりは長く、苦しい。特に成功前が心身共にボロボロになり、辛い。しかし、その先には成功があるのだ。必ずあるのだ。それでも何人かの人は成功前の暗さに耐えかね、諦め、辞めてしまう。この先に喜びがあるにも関わらず…。

 「それではいけないッ!」と言うつもりはないけれど、その先にある美しさを見ずに布団に入るにはもったいない。僕は絶対にその景色を見たいのだ。いや、見てやるのだ。明日の事は何もわからない世界だから、必ずというのはないのかもしれないけどこの言葉を残したい。この言葉は何かに折れそうな貴方に送るのでない。明日の自分に対して言ってやるのだ。
「夜明け前が1番暗いぞッ!」と。