昨日の「ブルックナー名演の条件」に続き、

さあ、今日は、
「ウィーン・フィルのブルックナーにハズレなし」
についてお話します。

このオーケストラは音楽を愛しています。
だから、音楽に真摯です。


日頃は舞台オケがメインなのでスタミナもあります。
3時間のワーグナーもへっちゃらです。
なのでコンサートプログラムくらいではバテない。

ブルックナーの初演を多く手掛けるなど、
この作曲家との付き合い、歴史と伝統は100年以上続きます。
なによりも、お国物です。

指揮者は団員により選ばれるので、
これ見よがしな解釈は通じませんし、
次から呼ばれません。

弦楽器の空気に湧き上がるような粒だちの良さは、
ブルックナーのトレモロに良く合います。
自慢の豊潤なチェロとコク深く自然味溢れるウィンナ・ホルンのハーモニーは、
このオケでしか聴けません。
ブルックナーもこのオケのサウンドをイメージしながら
筆を進めたことが想像されます。

隣席奏者と音色を聴きあう木管軍の
息遣い、チームワークの良さ、
そして、決して個人技に走らない、
けれど十分な技術に裏付けされた
各木管ソロは本当に惚れ惚れします。

ここんちのトレードマーク、
ウィンナ・ホルン!
その嵌まった時の美しさ、
ミスはするけど、だからこその緊張感が面白く、
よくキュッヒルが「またやりやがったよ」とギョロっと睨み付けたり、
「今のは見事だ」と頷いたり…、
舞台のやり取りをみるだけでも、
絵になります。

軽く伸びやかでいて、
それでいて輝かしく、
かつ、馬力とレンジの広いトランペットは
ブルックナー演奏には不可欠です!

独特の楽器を使うティンパニによって、
奥行きと深みが増します。

彼等のブルックナーは完成度が常に高いかというと、
完成度という点ではダメな時もあります。
しかし、それでも感じるのは、
音楽に対する精神性の高さ、
音楽性の高さ、
そして音楽への意識の高さは、
常にひしひしと、そして、比類なく伝わって来ます。
つまり、多少グダグタでも
必ず何かしらの「お土産」が貰える、
そんな感じです。
多分、それは彼等の伝統と歴史、
そして音楽的教養の深さから、
自然と生まれる現象なのだとおもいます。

ブルックナー演奏にはこの「自然体」がいいんです!

上手いオーケストラはベルリン・フィルは筆頭に
もっと他にあります。

でも、私はベルリン・フィルはマーラーが良い!
ブルックナーは…。
まずもって指揮者に「やったる感」がありあり(笑)
フルトヴェングラー、カラヤン。
ラトルに至っては、
ブルックナーの9番のフィナーレ付きを先日取り上げて、
物議ん醸しています。
おそらく、その議論を呼ぶこともひとつの目的なのでしょうが…

昨年のベルリン・フィル来日公演。
例えば、フルートのパユ。
確かにめちゃくちゃ上手い。
でも、ソリスティックなんです。
「比類なく上手く弾いてやろう」的な。
例えば、ホルンのドール。
ブルックナー9番では、
たしか当日はトップではなく5番パートか何かでした。
腰抜かす位に上手い。
でも、「あんた、きょうは
そんなに目立たんでえぇんちゃうん」
と突っ込みたくなる位に、
他を圧する音量!!

この二人が悪いわけではなく、
スタープレイヤー揃いの組織は
どうしてもそうなるんです!
「俺が、オレが」と。

だから、「自然」「禁欲」「宇宙」な
ブルックナーにはあまり向かない。

ヴァントとベルリン・フィルの一連のブルックナーは素晴らしい。
でも、同じ時期のミュンヘンやドイツ響のほうがもっと素晴らしいのは、
この辺りに作用するのかも知れません。

て、ことで、
「ウィーン・フィルのブルックナーにハズレなし」。

では、今日は生憎の雨降りの土曜日。
温度も寒くはない。
窓とカーテンを閉め、
空調と照明は切り、
普段より少しボリュームを大きくして
お手元のウィーン・フィルのブルックナーを
聴いてみていただければと思います!