人生どうらく日記
ブルックナー
・交響曲第7番ホ長調
ロリン・マゼール指揮

ベルリンフィルハーモニー管弦楽団

(1988年フィルハーモニーホールでのデジタル録音)

マゼールと聞いて嫌がらないでくださいね(笑)

かく言う、私も苦手で、

10年ほど前、バイエルンとの実演にも接したことがありますが

全く感動しませんでした(私だけでなくその日の聴衆もすごく醒めていました)。

でもコレはいいんですよっ。


誰もがカラヤンの後継として

ベルリンフィルの音楽監督をするだろうと考えていた、

マゼール自身が意気揚々としていた頃の録音です。


第一楽章からゆったりとしたテンポで

しみじみと思い入れたっぷりに弱音に力点を置いて歌いあげます。

アダージョでも弱音の扱いが丁寧で比類がなく大変美しい。

反面、強音はかなり抑制している様子で、

スケルツォですらゆったり目のテンポで、

或る意味、禁欲的でさえあります。

しかし、フィナーレでは一転。

ここでオケを一気に解き放ち

華麗で堂々としたサウンドをオケから引き出します。

ここらあたり流石マゼールです。


ブル7の名盤、イロイロありますが、

楽章間のバランスの悪さは曲自体に起因しているとはいえ、

前半の登り坂を頑張って登っても、

後半の下り坂をどうもうまく下山出来ない演奏が多い中、

スケルツォを巧みに利用して弱音から強音に力点を移し

輝かしいクライマックスを築くマゼールの匠の業の勝利でしょう。

全曲通じてここまで聴かせたブルックナー7番、

この曲のバランスの悪さを指揮者の腕で払拭した

これは希有な名演奏といえるでしょう。