英語の「island 」の s はどうして発音しないのか
古英語では島は iland でした。s などは陰も形もありません。
一方、フランス語に ile という語がありました。
これも島という意味ですが、英語のisland とは本来別の語です。
このile はもともとラテン語のinsula( 島) から来ています。
(イル・ド・フランス という地名がありますね!)
15世紀、世はまさにルネッサンスの時代のこと。
世間ではこぞって「ギリシャ・ローマの夢よもう一度」と、
とにかくギリシャ・ローマの古典文化の復興をめざした時代でした。
言語の世界にもチェックが入りました。
フランスの人々はile という単語を見て、
「ile はラテン語のinsula だもの。
わしらも s を入れなきゃまずいじゃん。」
と、フランス語で言ったことでありましょう。
そこでこの語は isle と綴られることのあいなりました。
(現在では île と綴られ、s を省略したために
アクサン・シルコンフレックスと言う山形の記号(ヘ)をつけます。
一方こちらはイギリスです。
海の彼方のフランスを見ると、島のことをile と言っています。
「それじゃiland は ile-land というのが正しいかもしれないね」と、
とんでもない勘違いをし、ときどきそのように書くようになりました。
そしてルネサンスの結果フランスでile がisle と綴られるようになると、さっそくそれをまねて isle+land という綴りが誕生し、そこからisland という綴りができました。
そして、このislandという綴りが定着しました。
s という字はこうして入ってきましたが、発音はされませんでしたので、黙字のs となったのです。
結局、わざわざ語源的に関係のないラテン語の insula のsが、
とうとう英語のisland に入って、綴りと発音の関係をややこしくしたのですから、これはやはり「余計なお世話理論」と呼んでよろしいかと思うわけです。
『英語史で答える英語の不思議』 遠藤幸子 著
南雲堂フェニックス
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