インフィールドフライについて述べた際に、相手野手が故意に飛球を落球して併殺を狙うのを防止するためのものだと書いた。
では、どんな場合故意落球と判定されるのかを、例を挙げて説明する。
二つ例を挙げるが、いずれもナゴヤ球場(旧中日球場)での中日対巨人戦でのものだ。
(例1、故意落球と判定された)
巨人は、一死一塁で打者は投手の堀内恒夫さん。
一塁走者は、捕手の吉田孝司さん。
堀内さんは送りバントをしたが、これが一塁前への小飛球となった
一塁手ジョン・ミラーは、併殺を狙ってこの小飛球をファーストミットに当てて落とした後、二塁へ送球した。
審判は、これをミラーの故意落球と判定して打者堀内さんのみをアウトにした。
が、当時のルールでは故意落球もインフィールドフライ同様に審判の宣告後もボールインプレイだったため、二塁に走っていた一塁走者吉田さんの二塁への進塁が認められた。
ミラーからの送球を受けた遊撃手の一枝修平さんが故意落球の判定に気づかず、一塁からの走者吉田さんへタッチせずに一塁手ミラーに送球したからだった。
なお、現在はルールが改定されて審判が故意落球と判定した時は、即座にボールデッドとなってプレイが止まるようになった。
(例2、故意落球として扱われなかった)
巨人は、無死一塁で打者は土井正三さん。
一塁走者は、柴田勲さん。
土井さんは送りバントをしたが、これが投手前への小飛球となった
この時、一塁走者柴田さんが離塁していないのを見た中日の投手稲葉光雄さんは、この小飛球を直接捕球せずワンバウンドさせてから捕球し、一塁手のトーマス・マーチンに送球した。
マーチンは、稲葉さんからの送球を受けた後一塁ベース上に残っていた走者の柴田さんにタッチした。
一塁塁審は、打者土井さんと走者柴田さんのアウトを宣告し、併殺となった
稲葉さんが小飛球をワンバウンドさせて捕球した時に球審がフェアを宣告したため、一塁走者柴田さんはフォースとなって二塁に進塁しなければならなくなったのだが、柴田さんは稲葉さんが小飛球を直接捕球するものだと判断して一塁ベースにとどまったのだった。
稲葉さんが一塁手マーチンに送球した時点で打者土井さんがアウトとなり、二塁に進塁しなければならない柴田さんが一塁に残っていたためマーチンが柴田さんにタッチしてアウトにし、併殺を完成させたのだった
仮に、稲葉さんがワンバウンドで捕球した時柴田さんが二塁に走ったなら、次のプレイが完成しない限り併殺は成立しない。
1.稲葉さんが二塁に送球して、二塁から一塁に転送して一塁走者柴田さん、打者土井さんを共にアウトにする。
2.稲葉さんが一塁に送球して打者土井さんをアウトにし、一塁手マーチンが二塁に送球して一塁走者柴田さんが二塁へ到達する前に二塁手若しくは遊撃手が柴田さんにタッチしてアウトにする。
ところが、このプレイは走者柴田さんが一塁ベースにとどまっていたことから、マーチンは二塁に送球する必要がなくなり一塁ベースにとどまっていた走者柴田さんにタッチするだけでアウトに出来たのだった
21世紀に入ってから、日本のプロ野球で故意落球と判定されたのは3例ある。
2008年3月30日
中日対広島戦(ナゴヤドーム)
6回表、広島の攻撃は無死一塁。
広島の打者緒方孝市(前監督)は、ショートへライナー性の打球を放った。
中日の遊撃手井端弘和は、地面スレスレでこの打球を捕球するも、すぐに地面に転がして拾い直して二塁に送球し、二塁手荒木雅博が一塁に転送した。
しかし、二塁塁審杉永は即座に井端の一連のプレイを故意落球と判定し、打者緒方のみがアウトとなって一死一塁で試合が再開された。
2010年8月5日
オリックス対西武戦(京セラドーム大阪)
6回表、西武の攻撃は一死一塁。
西武の打者佐藤友亮(現コーチ)は、一塁横へライナー性の打球を放った。
オリックスの一塁手T-岡田は、一旦この打球をファーストミットに収めるも落球。
しかし、一塁走者平尾博嗣が落球に気づかず一塁ベースに戻ろうとしたことから、T-岡田は一塁走者平尾にタッチした後、打者佐藤が一塁に到達する前に自ら一塁ベースを踏んで一旦は併殺となった。
これは審判団の協議によってT-岡田の故意落球と判定が覆され、打者佐藤のみがアウトとなって二死一塁で試合が再開された。
2016年9月2日
ロッテ対西武戦(千葉マリンスタジアム)
延長12回表、西武の攻撃は無死一、二塁。
西武の打者エルネスト・メヒアは、ショートへライナー性の打球を放った。
ロッテの遊撃手鈴木大地(現楽天)は、ライナーをグローブで弾いた後に二塁へ送球したが、二塁塁審津川は即座に鈴木の故意落球と判定し、打者メヒアのみがアウトとなって一死一、二塁で試合が再開された。