「スタイリストに見てもらいますので、

少々お待ちください」

 

カットが一段落すると、

Tさんはやや緊張した様子で、店舗奥に消えた。

 

程なくキャップ姿の店長が、Tさんを従え登場する。

 

「どうもぉー、お疲れさまです。

お名前が分からないので、モデルさんと呼ばせて下さいね」

 

こちとら長い人生で、

一度も「モデルさん」なんて言われたためしはない…。

 

 

「ちょっと触りますよー」

 

髪の毛束を持ち上げる仕草が、いかにもプロっぽい。
 

「襟足にはクセがあるから、

ここをもう少し切って」

 

どうやら頭のカタチまで、瞬時に分析したようだ。

 

「左右のハチの出方が違うでしょ。

張ってる左に合わせて右側を切りすぎちゃダメ。

逆の発想で、右を梳いてボリュームを出すといい」

 

逆の発想かぁ…。

 

「元々のカットがサイドしか梳いてない…

これだと全体が重くなるでしょ。

後ろを少し梳いてあげると軽くなる」

 

テキパキと(=ずけずけと)指示を与える。

 

「すみません、もう少しお時間大丈夫でしょうか…」

 

そのための0円カットなのである。

少しでも役に立たなくては…。

 

それにしても、頭のカタチが左右非対称ねぇ…

御説御尤もだが、考えてみたこともなかった。

 

気を悪くしたわけではないのだが、

タダとはこういうことなのだろう。

 

良い勉強になった。

 

(第四部 修行編に続く)