サスペンス~夏休み特別編☆笑~
「深草明子」のスタイルで本屋に来ていた。
変装のバリエーションとかの参考にするのに
雑誌を数冊買い込んだ。
あの会員制ホテルに数日のんびり滞在して
そこで今後の検討するため「深草明子」スタイルなのだ。
長年追い続けてきたターゲット=羽田ももういないしね。
「キャー!!」
店内に響き渡る女性の悲鳴。
人が一斉にこちらに走ってくる。
その先を見ると手にナイフを持った若い男。
何かわめきながらナイフを振り回している。
アタシは一旦本棚の間の通路に出て
隣の棚の後ろに隠れ男が来るのを待った。
ナイフ男がこちらに進んで来た時
その男の背後に走りこみ
男の膝の裏を膝で突いて「膝かっくん状態」をかまし
それと同時に両手で男の肩を前に突き飛ばした。
不意を突かれて倒れた男の背中に座り
そばにあったハードカバーの分厚い本で
男の右手の甲を力いっぱい叩いた。
「骨、いっちゃったね♪」
心の中でつぶやく。
男の手からナイフが落ち、本棚の下に転がって入った。
それを横目で見てから
アタシはわざと男を抑える力を緩める。
まだ闘いたいから。
男は形勢逆転とばかりにアタシにまたがり首を絞めようとする。
アタシはそのままハードカバーの本で
男の目や前歯を狙い殴り続ける。
片目は残してあげる。視界の狭さにおびえるがいいわ。
前歯は痛いし、カッコ悪いし、高いわよ。
アタシは補償しないけど、アンタも被害者の補償する気なかったでしょう。
しかたないわね~。
男の片手は骨が折れてるから簡単にアタシの首は絞められない。
ついでに背後に手を回して男の腎臓の辺りも本で1回殴っておいた。
これからの生活に支障出るかもね。
男はついにダウン。
こんなヤツには鍼は使わない。
痛みもなく一撃で失神させるなんて幸せ与えない。
だってアタシがやっつけたから、
こいつは未遂ですぐムショから出てきてしまう。
知らない人にヤられる怖さと痛みを存分に味あわせて
もう二度とそんなことが出来ないようにする。
そのためには「正当防衛」が立証されるように
一回形勢を逆転させるのだ。
遠巻きにして見ていた人達が寄ってくる。
「大丈夫ですか?」
何人かが心配そうに声をかけてくれた。
「ありがとう。大丈夫です。かすり傷程度です。
傷を流してきます。」
そう小さく答えると私はトイレに向かった。
その後警察やら、マスコミが押しかけて
場内は一層騒然として来たので
そっとその場を立ち去った。
ホテルにチェックインしてテレビを点けると
なぜか私の格闘シーンが流れている!
現場にいた何人かがケータイで動画撮影していたと言うのだ。
彼らは興奮気味に話す。
「いやー、あのオネーサン!カッコ良かったっすよ!マジで!」
誰に聞いても同じコメント。
ボキャブラリーが貧困だなぁ。
ってゆーか見てたんなら助けろよ。撮ってないでさぁ。
アタシならいいけど、他の人なら殺されるよ?
勝手にヒトの映像流すなよ・・・。
コンコン!「警察です!開けてください!」
部屋のドアをノックしている。
あーもーこの映像のせいで面倒なことになったわ。
余計なことしやがって。
しぶしぶドアを開けるが顔には出さない。
そこには若い私服の警官が2人立っていた。
「深草明子さんですね?
本日の本屋通り魔事件について少々お話を伺いたいのですが。
こちらではなんですので、パトカーで署の方まで
ご一緒に来ていただけないでしょうか?」
アタシはにっこり微笑むと
「まぁ。私が犯人のようですわね」
「いえいえ。この度は深草さんのおかげで
被害者が出ずに済みました!
容疑者を起訴するにあたって
状況をお話いただきたいのです」
「わかりました。ご同行させていただきます」
警官2人とホテルを出ると
外は照明が焚かれ、マスコミやら野次馬で溢れかえっていた。
「深草さん!一言お願いします!!」
「深草さん!怖くなかったですか?」
「深草さん!こっち向いてくだっさい!!」
あまりの騒ぎに面食らったが
アタシはにっこり微笑み一礼してパトカーに乗り込んだ。
警察署に向かう道中、話しかけられた。
「いや~深草さん、一躍『時の人』ですね!
それにしても刃物を持った犯人に向かって行くなんて
怖くなかったですか?」
「それは怖いですよ~。でも誰かが止めないと被害者が出ますし
もう無我夢中でしたわ」
「そうですか。たいしたもんですね~!
見習いたいもんですよー!」
のどかな雰囲気の中、警察署に到着した。
警察署の外もお祭りみたいな騒ぎで
パトカーの近くにはずっとマスコミの車がついていたけど
警察署直前では人ごみの中を進み、
人の押し寄せる勢いでパトカーが揺れていた。
あれ、何人か足轢かれてるんじゃないのかなぁ?
パトカーを降りる時は警官5人が囲ってくれたけど
もみくちゃにされながらやっと建物に入った。
署長室に案内されると
署長と法務大臣の星がいた。
「やぁ、深草君」
星が楽しそうに片手を挙げる。
「・・・そういうことだったのね」
アタシはどさっと応接ソファーに腰をおろした。
「僕は『正義の味方』がキミだと聞いて
駆けつけたんだよ。迷惑かい?」
ニヤニヤ星が言う。
「アタシを『正義の味方』に仕立てたのは
アンタでしょ?星大臣。
やられたわよ」
アタシはもうどうでもよくなってタバコに火をつけた。
「いやーキミは実に大活躍だったよ。
最近『誰でもいいから殺したかった』とか言う輩が多くて
マスコミもそればっかりニュースでやってたから
模倣犯が増えて辟易していた頃だったんだよ。
キミのような『ヒロイン』が取り沙汰されて
犯人の印象が薄くなれば模倣犯は減るかもねぇ」
アタシの向かいのソファーに腰をおろした星は
感慨深そうなフリをして話す。
「それが狙いだったのね。気づかなかったわ」
そっぽむいて煙を吐き出すアタシ。
「これでキミはまたテロを防いだ訳だ」
満足そうに星は言う。
「はぁ?」
アタシは呆れ返って星を見る。
「通り魔は無差別テロと同じじゃないか。
関係のない善良な市民が被害者になる。
マスコミがそれを煽り、同意する者が模倣し
あちらこちらで被害が出る。
テロそのものだよ。」
なるほど、一理ある。
「ただ問題は2つある。
キミはこのマスコミの騒ぎからどう逃げる?
ヤツラのしつこさは生半可なものじゃない。
そして隠密活動が基本の公安の人間が
こんなに有名になったらどうだろうねぇ?」
星はアタシにあの言葉を言わせようとしている。
悔しいけど、星の言ってることは事実だ。
このままマスコミから逃げ続けても
アタシの仕事は成り立たないだろう。
この男にはかなわないや。
「アタシは星法務大臣の秘書です。
公務に関わりますのでインタビューはお断りしますって
そうマスコミには答えるわ」
アタシもニヤリと笑って星を見つめ返した。
「な?オレが必要な日が来ただろう?」
・・・・・END・・・・・
最近あまりにもくだらない理由の通り魔が多いので
小説の中だけでも懲らしめたくて続編書きました。
私が瑤子だったら、