(セ・リーグ、巨人2-2阪神=九回規定により引き分け、24回戦、阪神12勝9敗3分、13日、東京D)


残り9試合、全部勝つしかない!!阪神は巨人に2-2で、首位ヤクルトが勝利したなか痛恨のドロー。矢野燿大監督(52)は「勝たないとダメ」と唇をかんだ。背中の張りで4番の大山が2日連続で欠場し、この日は先発の西勇が右肘の違和感を訴えて緊急降板。逆転優勝へ苦しい状況だが、勝って勝って奇跡を起こす!!


崖っぷちから、奈落の底をのぞき込んだ。もう落ちるだけの状況だったが、落ちることだけは耐えた。でも、ドローではダメ。一歩も引けない一戦での『半歩後退』だ。複雑な表情を浮かべた矢野監督の言葉には、悔しさとナインへのねぎらいが入りまじった。


「ウチは勝たないとダメな状況なんでね。その中でやれるのは引き分けしかなかったんで。よう踏ん張ってくれたかなと思うけど、その一方で勝たないと」


連投もイニングまたぎもいとわず、誰より勝利への執念を見せてくれていた守護神を、セーブ機会で送り出すことはできなかった。すでにバンテリンドームではヤクルトが中日に勝利を収めていた。もう勝てない、燕に近づくことはかなわなくなっていた虎だったが、引き分けだけは死に物狂いでつかまなくてはならなかった。


2-2の九回1死から、スアレスはウィーラーに右中間二塁打を、代打・中島に遊撃内野安打を許してしまう。ここまでかと覚悟をしかけたが、剛腕クローザーはここでも、バットにボールを当てさせない力を振り絞った。吉川、松原を連続三振に斬り、かろうじて引き分けた。



先発した西勇は、1-1の二回1死二、三塁から松原に二ゴロを許し、一時勝ち越しとなる得点を挙げられた直後に自ら手を挙げマウンドを降りた。試合後、指揮官は右肘にアクシデントがあったことを明かしたが「これから検査してみないと分からないけど、現状すごい大きなところはないと思っているんだけど、病院行かないと分からない部分が多い」と言葉も表情も曇った。


大山は前日12日の練習中に背中の張りを訴えた影響で、この日もベンチ外。エースとして期待されてきた男と4番が相次いでグラウンドを去って、何とか敗れはせずに優勝争いから転げ落ちずに済んだことが、逆に不思議でさえあった。2位以上が確定し、巨人はもう相手ではない。この引き分けは、14日に巨人をたたき、ここからすべて勝ってこそ効いてくる。


阪神が残り9戦を全勝すれば、81勝54敗8分けの勝率6割に達し、ヤクルトがそれを上回るには8勝4敗が必要となる。2戦を残す直接対決にも阪神が勝つことを意味し『実質8勝2敗が必要』という計算だ。厳しい状況ではある。だが、もう燕を追えるのは虎だけだ。2・5差に広がり、優勝マジック8にされたが、この夜、引き分けられた小さな奇跡を、ここから続く大きな奇跡の始まりにするしかない。


「これはもう、今までみんなようやってきてくれたし。年間の中で(故障者や)そういうことが出てきている状態なんでね。それは誰か1人で埋められない」と指揮官。最後に訪れた最大の危機。9戦全勝で、不可能を可能に変える。