阪神からドラフト3位指名された新潟医療福祉大の桐敷拓馬投手(22)が16日、平成国際大戦で関甲新学生リーグ史上初の完全試合を達成した。出場した全打者からリーグ新記録となる19三振を奪い快挙に花を添えた。指名後初登板で見せた超の付く快投。タテジマに袖を通した150キロ左腕の偉業達成が今から楽しみだ。


制球ミスさえ許されない極限のラスト。27人目の打者に対し、桐敷がフルカウントから選択したのは最速150キロを誇る自慢の真っすぐだった。こん身の1球は真ん中高めに決まりバットは振られることなく球審の手が上がった。6者連続三振締めでの快挙達成。それでも感情を爆発させることなく、安堵に似た笑みを浮かべるだけだった。


「試合に勝ったこと、それが第一ですかね。結果的に完全試合になって、みんな(チームメート)が喜んでくれるのが自分は一番よかったなと思います」


両親がバックネット裏から見守った指名後の初登板。「今まではドラフトを意識していたんですけど、吹っ切れた状態」。145キロを計測した威力十分の直球と切れ味鋭いスライダー、フォークも絡め相手打者を寄せ付けなかった。試合前から小雨が降り続く天候にも「これぐらいだったら自分には合ってる」と制球も乱れず。3ボールも最後を含め2度だけだった。


右打者7人が並ぶ相手打線に対し、特に効果的だったのが、持ち味の内角攻めだった。担当の吉野誠スカウトが「ここ最近、良くなった。あの辺に投げられたら、なかなか打ちにくい」と称したスライダーが、面白いように膝元に決まり、見逃しはもちろん、バットにさえかすらせなかった。「4年生になってから右打者の内角に投げるのは意識していた。それが試合で投げられるようになってきて。また一つ、投球の幅が広がった」と桐敷。最終学年で身につけた新たな武器が、偉業を後押しした。


「今までやってきたことは変えずに、その中でしっかり課題を見つけて。目標は開幕1軍。そこに向けて照準を合わせて、しっかりやっていきたい」


長い歴史の中で、阪神投手は一人も完全試合を記録していない。ひと足早く「ミスターパーフェクト」となった桐敷が猛虎でも偉業を再現する……。期待を抱くには十分。いや、完璧すぎる118球だった。


<憧れは最強ライダー>150キロ左腕の桐敷は、やはり速いものに憧れを抱く。兄や父が好きだった影響で小さい頃からサーキット場に足を運んでいたことを明かし、好きなオートバイレーサーに「史上最強のライダー」とも呼ばれたバレンティーノ・ロッシをあげた。「レースが始まる直前まではカメラに向かってふざけたりしているんですけど、ヘルメットをかぶると別人になる。そういう切り替えが、同じスポーツで考えたら憧れというか、まねしたいなとは思います」。自らもファンを喜ばせるプロ選手へ、アクセルを吹かせる。