あっという間に、厳しい状況に追い込まれていた。阪神が開幕からの20試合で見せたのは「16勝4敗」という快進撃だったが、ヤクルトがこの秋に見せたのはそれ以上の勢いだった。9月14日以降の24試合を「17勝3敗4分け」で勝ち進んだことで、一気にひっくり返されてしまった。阪神の最近24試合も「11勝10敗3分け」で、決して責められるものではなかったが、10月10日までの直接対決3連戦でも1勝2敗と負け越し、優勝へのマジックナンバーも「9」とされてしまった。


仮に、ヤクルトが残り14試合を7勝7敗の勝率5割でフィニッシュすれば、阪神がそれを上回るには10勝1敗が必要となった。残す直接対決は10月19、20日の2戦のみ。マジックを点灯されているということからも『自力だけ』ではどうしようもない状況だが、ここでこそ阪神が近年見せてきた「走り切り力」を見せて欲しい。チームの状況や順位はシーズンによってもちろん違ったが、ここ数年の阪神は、レギュラーシーズンの閉幕を連勝で締めくくることができる傾向がある。


金本監督の就任1年目となった2016年は、7連勝でシーズンを締めくくった(ラスト11戦は8勝3敗)。翌年、17年も最後は4連勝で駆け抜け、ラスト11戦は7勝3敗1分けだった。


最下位に沈んだ18年だけはラスト11戦も3勝8敗と苦しんだが、矢野監督の就任1年目だった2019年は、広島から最後の最後に3位を奪い、大逆転でクライマックスシリーズ進出を決めた。このときは最後の6戦で6連勝し、9試合を8勝1敗という驚異のペースで勝ち進んだ。この年もラスト11戦は8勝3敗だった。もちろん、3位に食い込もうとするのと、逆転優勝を狙うのとでは重圧は大きく違う。だが、もう失うものがない、駆け抜けるしかないという点では、何も違わないはずだ。


たとえば、19日の直接対決までに阪神が5連勝すれば、その間に6試合が組まれているヤクルトが2勝4敗だった場合、一旦はマジックを消すことができる。そこからはもう、ヤクルトが8戦を4勝4敗なら阪神が6戦で4勝2敗が必要という、ほぼ五分の戦いになる。


厳しい状況でも、何も終わっていない。もう一度、相手以上の勢いを生み出すしかない。