◆JERAセ・リーグ◆ヤクルト1-2阪神(9日・神宮)


阪神はまだツキに見放されていなかった。驚きの勝ち越し打に矢野監督が笑顔を見せ、選手たちはベンチ前で拳を突き上げた。7回1死二塁。島田の打ち取られたかと思われたゴロが一塁キャンバスに当たり、一塁・オスナが反応できない。右翼線に打球が転がる間に二塁走者が生還。4年目の『ラッキーボーイ』のヒーローインタビューの言葉がすべてだった。


「打った瞬間、やってしまったと思ったんですけど、ベンチの思いとファンの方の声援がああいう打球を生んでくれたと思う。ありがとうございます」


前夜は直接対決に敗れ、首位ヤクルトに優勝マジック「11」が点灯。この日は初回に大山が先制打を放ったが、3回に同点に追いつかれ、苦しんだ。7回も島田の後が続かなかっただけに…。ドローでも優勝マジックが減る状況で生まれた幸運な決勝二塁打だった。


その1点を執念タクトで守った。勝利の方程式を担う岩崎&スアレスをともに今季初のイニングまたぎで投入。岩崎は7回から登板して、8回1死まで完全救援だ。バトンを受けた守護神スアレスも力を振り絞り、9回1死満塁の窮地では150キロ後半の剛球で山田を二飛、村上は投ゴロにねじ伏せ、今季39セーブ目を刻んだ。


ヤクルト戦の連敗を「3」で止め、2ゲーム差に縮めた。ただ、劣勢に変わりない。就任3年目で通算200勝に到達した指揮官も「スクランブルであの(7回からの)3イニングをどういくかを考えていた。ずっと、(試合展開は)しびれているよ」と余韻に浸るつもりはない。残り12試合。最後に勝利の女神がほほ笑むことを信じ、全力を尽くす。