阪神は1点リードの8回裏になぜ岩崎優を投入しなかったのか、という批判がある。代えて起用した及川雅貴が逆転2ランを浴びたからだ。


優勝を争うヤクルトが同点でも清水昇とスコット・マクガフをともに3日間連投させ、サヨナラ勝ちしたから余計である。


阪神は救援陣が登板過多にならぬよう相当に配慮、管理している。今年に限らず、近年の傾向である。今季のセットアッパー・クローザーでいえば以下の通り。


岩崎        54試合(36ホールド)

スアレス  55試合(38セーブ)


に対してヤクルトは以下の通り。


清水        63試合(43ホールド)

マクガフ  58試合(26セーブ)


となっている。


岩崎登板となれば3日間連投(5日で4試合)だった。今季過去2度あるが、当時の疲労は目に見えていた。だから8回裏に入る時点で、岩崎温存、及川起用と予測していた。違和感は感じなかった。


結果は裏目と出て、継投ミスの声もあがる。しかし、球団の財産でもある選手を壊してまで行う用兵は避けるべきだ。


他に選手もいる。監督・矢野燿大はだから自ら決断、信頼して送り出した及川に珍しくマウンドまで出向いて激励し、そして打たれて敗れた。相当に堪える敗戦だが、指揮官としては結果は受けいれるしかない。


敗戦後、岩崎と先発勝利が消えた伊藤将司がともに及川の肩を抱き、慰めていた。全員野球という言葉を使うなら、阪神は全員で勝ちにいき、全員で敗れたのである。


ただし、いまの阪神に悲しんでいる暇などない。試合後の深夜、横浜スタジアムから東京都内のホテルまでバスで移動した。きょう8日からヤクルトと直接対決3連戦を迎える。以前、原稿で予告のようにして記した優勝を占う天王山である。ヤクルトが勝ちまくっている現状では3連勝がほしい。「マスト・ウィン・ゲーム」の3連戦である。


時は「10・8」である。あの1994年10月8日、巨人-中日、史上唯一の最終戦同率優勝決戦の日である。


巨人監督・長嶋茂雄は槙原寬己、斎藤雅樹、桑田真澄の先発3本柱を投入した。中日は今中慎二の後、いつもの継投策を貫いた。「あの年の中日はあの連中でつないできたシーズンだったんです。(中略)だから、それでいこう、と……」と中日監督・高木守道が後日談で打ち明けている。鷲田康の『10・8・巨人vs中日・史上最高の決戦』にある。


そして中日は敗れた。高木はさらに反省の弁を述べている。


「ああいう試合を普段通りに、いつも通りにやろうという考えは大間違いでした。やっぱり、あの試合は(中略)特別な試合だったんです」


特別な試合には特別な用兵。阪神はそんな特別を出す時にきているようだ。


「10・8」が来れば、矢野もヘッドコーチ・井上一樹も思い起こすことだろう。当時は2人とも中日の若手だった。ベンチの片隅で激闘を肌で感じていた。あの殺気立つ闘志がいまはほしい。そして異常な采配をふるう時である。