(セ・リーグ、DeNA4-3阪神、25回戦、阪神14勝11敗、7日、横浜)

つ、痛恨…。阪神はDeNAに3-4で敗戦。八回に3番手で登板した及川雅貴投手(20)が逆転2ランを浴びた。マウンドに足を運んでハッパをかけた矢野燿大監督(52)だが、岩崎優投手(30)を温存したことが裏目に。8日からは首位ヤクルトと敵地で直接対決。引き分けでも自力V消滅の危機に立たされた3連戦へ、就任3年目の集大成をぶつける。

託せる、いや託したいと心の底から思った。だから矢野監督はマウンドへ向かい、及川に魂を注ぎ込んだ。逆転被弾による敗戦から、数分後にヤクルトは劇的白星を拾った。残酷なコントラストを描き、きょうから直接対決。もう、集大成をぶつけるしかない。

「あしただけ特別っていうことは何もできないかもしれないけど、俺らが今までやってきた野球を思いっ切りぶつけるっていうことしかできないんでね。みんなの思い、本当に必死な思いっていうのは、俺もベンチも重々分かっているので」

3-2の八回。前日まで10月の5戦のうち4戦に登板してきた岩崎の登板過多も考慮し、及川を送り出した。先頭・牧への四球から1死二塁でソトを迎えると、動いた。今年7月3日の広島戦で伊藤将に語りかけて以来、就任3年目で2度目のマウンドで直接、ハッパをかけた。

「『思い切って行け』と。『ここまで成長してきたのも1年見てきたし、ここで投げさせていいって思って、俺はお前を使っているから』と」

及川も向かっていったが、ソトの一発は無情にも横浜の夜空を切り裂いた。負けないヤクルトに食らいつき、この日までともに5つ白星を並べ続けてきた。手は尽くし、直接動いたが、今季最後の横浜の夜、虎の連勝だけが止まった。

あの一発へ至る『たられば』はあった。3-0の四回無死一塁。投ゴロをはじいた伊藤将の一塁への悪送球から歯車が狂った。1点を失いなおも2死三塁で、山本が放った三塁前へのゴロは大山がグラブに収めた白球を握れず、適時内野安打として2点目を許した。神宮で虎を待つヤクルトは、わずか2安打で0-0の九回に巨人にサヨナラ勝ち。明暗が分かれた。

6月19日までヤクルトには最大7ゲーム差あった。しかし、今季ワースト2ゲーム差をつけられた2位で、厳しい数字ばかりで直接対決を迎える。きょう8日に引き分けると、ヤクルトに優勝へのマジックナンバー「12」が、敗れれば「11」が点灯する。初戦を取ったとしても、2戦目以降に敗れるか引き分けた時点でマジック点灯を許す。2勝1分けでも10日には「M12」が、2勝1敗なら「M11」が点灯する。この直接対決でのマジック点灯を阻止するには、3連勝しかない。それでも首位は奪えないが…。

ヤクルトが残り17試合を8勝9敗で進んでも、阪神がそれを上回るには10勝4敗が必要だ。苦しさを受け止め、矢野監督は必死で前を向く。

「直接対決でしか上に行くね、チャンスって言うのは現状、少なくなってきているのでね。あした、まずしっかり取れるようにやっていきます」

5連勝ののち、残酷かつ痛恨の1敗。だが、下は向かない。下を向いていたら、このまま頂点へ走られてしまう。

■データBOX2位阪神が敗れたことで、首位ヤクルトは早ければ8日にも優勝へのマジックナンバーが点灯する。阪神が負ければマジック「11」、引き分けても「12」がつく。ヤクルトにマジックがつくのは優勝した2015年以来6年ぶり。