試合前、当番デスクの阿部祐亮が弱気なことを口にしました。


「大貫は、阪神戦は強いんですよ」


今季4試合に登板して2勝0敗。防御率1・52。シーズン通しての成績は6勝5敗、防御率4・42だったのに阪神戦になると好投するのです。


「逆に西勇はDeNA戦は2年越しで3連敗中です。きょうから阪神が連敗してヤクルトが1勝1分け以上なら、あした(7日)、ヤクルトに優勝へのマジックナンバー12が点灯します。1ゲーム差の接戦なのに、けっこうしんどい状況なんです。だから心配で」


デスクはマイナス材料ばかりあげていますが、現場のトラ番たちは、どっしり構えていました。まずは打者担当のトラ番原田遼太郎です。


「相性を言うなら、阪神の打者は横浜スタジアムでよく打っています。大貫投手の今季の阪神戦登板は甲子園2試合と京セラと東京ドームです。ハマスタでの対戦は初めてですから、きっと」


キャップ長友孝輔も、大貫をどうしても打てない難敵とまではとらえていませんでした。


「完璧に抑えられてきたわけじゃありません。負けた試合は(6月27日●3-8、8月25日●2-10)序盤で失点して、楽に投げさせています。先に点を取ったら、相性を気にするほどではないと思いますよ」


期待した通りの展開になりました。四回にロハスに先制2ランが出て、西勇も走者を背負いながら粘投。そして、なかなか追加点が取れないジリジリする試合の中でもう一人、余裕の表情だった男がいます。10月1日の人事異動でレース部担当部長になった西村紳。この日が紙面総括デビューの西村は、阪神がらみの仕事になると強運を発揮してきました。レース部の前に、整理部デスクから運動部デスクになった2003年、いきなり『胴上げ当番デスク』になっています。


「優勝は間違いないという状況になって、7月末から『週刊・阪神V』という本を毎週出したシーズンです。その本を担当するようになったので、当番デスクは週1回、月曜日だけになっていました。そうしたら、9月15日(第3月曜日、敬老の日)に優勝が決まったんです」


現在の担当部門のボートレースでは、個人的に舟券を買うと「6艇しか出ていないのに、なぜこの艇だけ買っていないのかと嘆きたくなるくらいの勝負弱い外し方をしている」そうですが、自分の仕事がからむと持っている男に変身します。


「05年の有馬記念で、1番人気のディープインパクトを2着に固定して、ハーツクライからの3連単で3万円超の馬券を当てました。あの日も運動部の当番デスクで、ディープが勝ったら1面と決まっていたんです。ディープが勝てば(自分の)仕事が楽になる、(2着に)負けても馬券が当たる、と思って買ったんです」


しかも、負けたけれど、紙面もディープが1面になって『二重の喜び』になったらしい。よし、西村にいっぱい総括に入ってもらおう。そう思ってローテーション表を見たら、あら、今月は阪神の試合がある日に総括に入っていない。


来月は入ろう。とくに11月15日と28日。クライマックスシリーズ・ファイナルステージ第6戦と、日本シリーズ第7戦の日です。どちらも最終戦。試合があれば、勝った方が…のゲーム。今から自己申告しといてくれ。しかし、ヤクルトも負けませんなあ、頑張ってくれよ、巨人。