◆JERAセ・リーグ◆DeNA2-5阪神(5日、横浜)

佐藤輝が長いトンネルを抜けた。3日の中日戦で59打席連続無安打となり、投手を含めたセ・リーグのワースト記録を更新したが、1回に60打席ぶりの安打となる右前適時打を放った。チームは4連勝で首位・ヤクルトを1ゲーム差で追走。息を吹き返した若き大砲とともに再加速を図る。

60打席ぶりに快音を響かせ、佐藤輝は拳を握った。右手でベンチを指すと、ナインが跳びはねて喜んでいた。2点を先制した初回、なおも2死一、二塁。坂本の外角低め133キロカットボールを右手一本で引っ張り、一、二塁間を破った。8月22日から続いた連続無安打記録を止める適時打。「チームの勝利に貢献できたんで、必死だったんで、すごくうれしい。プロ野球は難しいなとすごく思いました」と振り返った。

開幕から本塁打を量産。『怪物』と称され、8月19日に球団新人最多となる23号を放った強心臓ルーキーにもつらい時期が訪れた。不振に陥り、9月10日にプロ入り後、初の2軍降格。夏場は「いい感じに(体が)絞れた」と前向きな発言をしていたが、実際は違った。「めっちゃ痩せましたよ」。初めてのプロ生活のストレスは、2キロ減った体重に表れた。

外出禁止で息抜きもできない状況。唯一の楽しみは「ウーバーイーツ」だった。寮ではできないため、遠征先のホテルで、子供の頃から大好きなお寿司やハンバーガーを注文してかぶりついた。好物を頬張っても体重は減少する疲労と重圧に立ち向かい、必死に練習を続けて自ら扉を開いた。

チームは6連戦初戦を制し、今季7度目の4連勝。DeNA戦8年連続勝ち越し、3年連続のシーズン勝ち越しを決めた。8月18日以来の貯金18。ヤクルトとの1ゲーム差をキープした。

矢野監督は「ルーキーとはいえ苦しい思いをずっとしていた。本当にうれしい顔をしてたんで、1本出て良かったと思う」と目を細めた。「チームの優勝に直結するような、そういう仕事をしていきたいと思います」と背番号8。黄金ルーキーの復活が、16年ぶりのリーグVをグッと近づける。