タイガース担当を通算19年もやっていると、過去に記事をめぐって監督やコーチ、選手にクレームをつけられたことは山ほどあった。


だが、僕の批判記事に対して「少し厳しいですね。でも、ダメなのに持ち上げられるよりはずっといい。これからも、悪いときは遠慮せずに指摘してください」と言ったのは、後にも先にも、高橋が初めてだった。


2020年の春季キャンプ中。フリー打撃でストライクが入らず「このままでは先発ローテ定着なんて無理」と紙面で指摘した翌日だった。この年は、左肩を痛めて5勝止まり。先発の軸と期待された今季も春季キャンプ中、上肢のコンディション不良で離脱した。


9月上旬に1軍復帰すると同25日の巨人戦、10月2日の中日戦と2試合連続完封勝利。「阪神に、こんなすごい投手がいたんだ」と驚いた球界関係者も多かった。


高橋の苦悩ぶりをみてきた平田2軍監督は「けがさえなければ、虎を背負っていくエースになる。あいつの良さは謙虚なところ。人の意見もよく聞くし、将来、実績を残してもテングになるようなタイプじゃない」と話していた。


残り17試合。逆転優勝へのキーマンとして期待が膨らむばかり。高橋中心の先発ローテが組まれるだろう。『愛されキャラ』でユニホームを脱げば、プロ野球選手ということをまったく感じさせない。応援したくなる選手だ。