緊急事態宣言が明けても、トラ番記者の甲子園球場への入場人数の制限は変わらない。それは、やむなし。「虎のソナタ」もテレビ観戦での執筆が継続だ。でも、テレビ画面の向こうの光景に思わず、つぶやいた。「戻ってきたなぁ」と。


一回。いきなり飛び出したマルテの先制3ラン。飛び込んだ左翼席の光景、ちょっと懐かしくなかったですか?超満員だった。みんな、一斉に立ち上がって。しかも、画面越しに大歓声が押し寄せてきた。


甲子園、メチャクチャお客さんが入ってるやん?緊急事態が明けて、一気に解放したんか?


と、記者席のトラ番キャップ・長友孝輔に電話した。


「先輩、それは目の錯覚です。お客さんはしっかり間隔をあけて、座っています。ただ、白っぽい服を着ているファンが多く、デーゲームで太陽がサンサンと当たっているから、満員に見えるんです。記者席からでも、一瞬、あの超満員が戻ってきたのかと勘違いするぐらいです。お客さんの声のボリュームが急激にアップしているのは事実ですね。ホントはいけないんですが…」


現場も「戻ってきた」感を味わったようだ。


別の超極秘情報ルートによると、酔っ払って大声を出すファンも現れたらしい。警備員が出動して、ちょっとした騒ぎに。こんなこと、昔は日常茶飯事だった。まあ、こちらは『戻ってきてほしくない』光景かもしれないが、何となく懐かしくって、好きだ。


万歳コールはもちろん、声を出すことも、現行の観戦ルール上はダメダメ行為だが、かつての風景が帰ってきている。いいことだと思う。


七回の攻撃前にジェット風船を飛ばせるようになれば、勝利の六甲おろしの大合唱ができれば…。忘れかけている普通の甲子園、4万7000人の甲子園に一歩ずつ、進んでほしい。


それにしても、高橋遥人の快投はお見事。圧巻の2試合連続完封だった。イニングの合間にちょっと『浮気』して、オリックス戦にチャンネルを合わせて、山本由伸のすさまじい快投も見ていたが、日本のエースと比較しても、遥人の成長はなかなかのモノ。日本シリーズでの投げ合いが、見てみたくなった。


そのためには、まずヤクルトを倒さなくてはいけない。シーズンの天王山、直接対決はちょうど1週間後の3連戦。舞台は神宮球場だ。この日、しびれる完封劇を演じた遥人も、満を持して神宮のマウンドに立つだろう。


実は高橋は、プロに入ってから、まだ1試合しか神宮での登板経験がない。2019年8月23日。そういえば…。試合後に話を聞いた記憶がよみがえってきた。


「大学(亜大)時代に何度も投げて、いろんな思い出のある球場だったので、一回のマウンドに立つ直前に、ぐるっと一周、見渡しました」


そんな話をボソボソとしてくれたのを思い出した。あの日、6回2失点の好投。味方の援護もあって勝ち投手になった。つまり、遥人は神宮では1戦1勝、勝率10割。頼もしきサウスポーが、調子もデータも万全で首位攻防に向かう。


現地で見たいなぁ。神宮球場が報道陣をヤマほど球場に入れてくれないか…。無理だよな。テレビでしっかり見届けます。