「虎キラー」のゼロ行進を、意地の一打でストップさせた。0-0のまま迎えた3回。梅野の死球と秋山の投前犠打でお膳立てしてくれた1死二塁のチャンスで、近本のバットが快音を放った。柳の2球目チェンジアップを振り抜いた打球は、右翼線先制二塁打。右腕から今季20イニング目で初めて得点を奪った。


「前回やられていますし、『何としても打つ!』という気持ちを持ちながらしっかり冷静に対応できた。まず先制できたというのが一番良かった」


柳には、4月3日の今季初対戦で8回を無得点に抑えられた。8月20日の前回対戦では147球の熱投を許し、屈辱の零封負け。まさに天敵だった。近本自身もその2試合で7打数無安打。チーム待望の1点を生んだ適時二塁打が、9打席目での初安打だった。


「梅野さんが出て、秋山さんが送って、というしっかりした形で点が取れたというのが、自分の中でも、チームとしても、いい流れができたんじゃないかと思います」


打線全体が低調の中で一人、打ち続けている。5回1死の第3打席でも中前打し、4打数2安打。打率・313は、リーグトップのDeNA・桑原から・005差の4位だ。安打数は146に伸び、リーグ1位を独走している。好調の要因を問われると「それはよくわかんないですね」と笑い、「しっかりピッチャーに対して打つだけなんで。1勝を積み重ねていきたいと思います」と、頼もしく前を見据えた。


この好調を維持すれば、同僚の中野を1差で追う盗塁王に加え、首位打者、最多安打のタイトルも十分に視野に入る。その躍動でチームを優勝に導けば、MVPの有力候補にもなるだろう。激しい優勝争いの中、今の猛虎攻撃陣の最大のストロングポイントが、進化を続けるリードオフマンなのは間違いない。