お先に!阪神2軍は24日、ウエスタン・オリックス戦に5-3で勝利し、2018年以来3年ぶり、ウエスタン・リーグ最多となる17度目の優勝を果たした。甲子園で2軍が優勝を決めるのは1964年以来57年ぶり。ファーム新記録の18連勝など若虎を大きく成長させた平田勝男2軍監督(62)は『平田節』でナインをたたえた。10月9日のファーム日本選手権でイースタン・リーグ優勝のロッテと対戦する。


コロナ禍で、歓喜の輪も胴上げもない。それでも、頂から見る景色は格別だった。甲子園が温かい拍手に包まれる。平田2軍監督の背中を見守るように、横一列に並んだナイン。そして、マイクを手に虎党の前に立った指揮官からは、万感の思いがあふれ出た。


「今年はファーム18連勝、そしてファーム優勝ということで本当に選手たちが一生懸命、努力した結果だと思います」


3点を先行された直後の二回。無死満塁から、まずは江越が食らいつき、右前へ2点打。続く山本の中前適時打で追いつくと、相手の暴投で一気に勝ち越し。計7投手の継投で逃げ切った。


「選手たちの粘りというか、勝ちたいを通り越して、勝つんだという意気込み。素晴らしい集中力だな」


今季30度目の逆転勝ち。最後まで粘り強く、泥臭く。2018年以来3年ぶり、16度で並んでいた中日を突き放すウエスタン・リーグ最多17度目のVは、1964年以来57年ぶりとなる甲子園で決めた。まさに、平田2軍監督の掲げる野球を体現する勝利でつかんだ、栄冠だった。



高卒ルーキーが多く入団した昨季は最下位に終わった。ファームは育成の場という、軸に据える考えは揺るがない。ただ、強くなってほしいからこそ、今年はとことん『勝負』にこだわった。特に消極的なプレー、逃げの姿勢は許さななかった。


「試合にならん、恥や恥」


4月21日のソフトバンク戦は先発した西純を含め、全5投手が四球を出し計14四球。逃げるなら打たれたほうがいい。それが成長の糧になると言い続けた。


マスコミも通じて厳しく、ときにはユーモアも交えた言葉でナインを鼓舞。指揮官の思いは若虎を戦う集団に変え、1打席1球に魂がこもった。常に1軍を想定したプレッシャーと緊張感の中で戦う姿勢が、ファーム新記録の18連勝を生んだ。「負けられない」という思いが2軍での勝負に重みを与え、チーム全体がぐっと強くなった。


高卒2年目の西純、及川が1軍で初勝利を挙げ、小川、島田、小野寺らも1軍で奮闘。それが何よりの成果だ。


12球団最年長、62歳の2軍監督は、真夏の鳴尾浜でも練習で球出しをしながら選手を鼓舞し続ける。冷めない闘志。次はロッテと戦う10月9日のファーム日本選手権…だけではない。1216人の虎党に宣言した。


「みなさんがきょう、ごらんになった選手たちが1軍の戦力として優勝に貢献することを私は確信しております」


若虎の体中にほとばしる平田イズム。今度は1軍で…。『兄貴分』と頂点に立つ。


◆平田2軍監督、今季のメッセージ


★1月9日…安芸キャンプのテーマを問われ「やっぱり進化。英語で進化は?進化秋冬。エボリューション」。


★3月1日…キャンプを打ち上げ「仕込みが終わった。これから熟成というか、大吟醸になるか2級酒に終わるか。どういう発表会をしてくれるか楽しみだね」。


★3月18日…ウエスタン・リーグ開幕前に「(目標へ)しっかり努力や準備をしないことには。夢ばかり語ったって無理。白馬の王子様来るか?来ないでしょ。馬に乗って誰が来るねん」。


★5月13日・オリックス戦…4三振の井上に「まだまだ、おこちゃま!ここでしょげたってしょうがない、力がないだけ。しょげるようなこと、させへんよ」。


★6月12日・ソフトバンク戦…ミス連発に「甲子園でやる資格無し。グラウンドの神様に申し訳ない。恥だ」。


★8月26日・オリックス戦…江越に打席での粘りを求め「ブリブリブリブリ、打ちたい打ちたいばっかりじゃダメ。ブリじゃだめなんよ、カツオ(勝男)!」。


★8月29日・大商大との練習試合…5失策8失点に「(アマチュアより)プロ野球の方が甘いのよ。エラーしようが何しようが(試合に)出られる。それにしても、お粗末、チョロ松、十四松。しぇーだよ」。


★9月11日・広島戦…17連勝に「マスコミが取り上げてくれるんだもん。俺はもう毎日プレッシャーで、8時間しか寝れないよ(笑)」。


★9月19日・中日戦…4安打の佐藤輝に「まあ、ノッテルな。ノッテきたな、ノッテル!打っテルよ」。