(セ・リーグ、中日2-1阪神、19回戦、阪神10勝8敗1分、22日、バンテリンD)


頼みの綱だ!阪神は中日に1-2で敗れ、首位をマイナス0・5ゲーム差でヤクルトに明け渡した。矢野燿大監督(52)は打撃不振で2軍落ちさせていた佐藤輝明内野手(22)を23日の同戦から昇格させることを決断。今季23本塁打を放つルーキーはこの日のウエスタン・広島戦で降格後初の一発を放つなど、完全に復調。破壊力不足の打線を救ってくれ!


走者をかえせる男も、一発で流れを持ってこられる男も、いっぺんに姿を消した。燕の連勝は止まらず、虎の勝負弱さだけは続く。陥落するべくして、首位陥落だ。相手先発の松葉について問われても、捕まえ損ねた中軸こそが問題だと、矢野監督は語気を強めた。


「こっちの状態じゃないの?見たら分かるやん、かえすところがかえされへんからや」


16年ぶりVへ手を伸ばそうという時期に、頼りたい男がそろいもそろって不振に陥った。一度は陥落し、奪い返して守ってきた首位の座を、19日ぶりに手放す事態に陥った。どう巻き返すのか。手を尽くし、どれも実らなかったが、今季の虎には2軍で牙を研ぐ『あの男』がいた。中日戦後、昼間に行われたウエスタン・広島戦で降格後初アーチを放っていた佐藤輝について問われた指揮官は即答した。


「うん、明日から上げる」


23日に緊急昇格させる。9月9日のヤクルト戦を最後に、矢野監督は黄金ルーキーを2軍へと送り出していた。球団新人本塁打記録を23に更新したところでピタッと止まり、出場13試合&35打席連続無安打は続いたままだったが、あえて『突き放した』格好になった。再び呼ぶこととなり「ファームに行って色んな気持ちの変化や、色んなことがあったと思うんでね。また輝らしくやってくれたらいい」と語ったように、親心でしかなかった。


佐藤輝の一発は、3点差を追いつかれた3-3の九回1死一塁で飛び出した。カウント1-0から中田の低めの直球をすくい上げると、左翼への打球はさすがの怪力で楽々フェンスを越えた。1軍でこそ見たい勝負強さとパワーがあふれ出た、降格後26打席目での初アーチだった。「逆方向でしたし、すごく良かった。一番は本塁打を打ちたかったので、そこは良かったです。(感覚は)戻ってきたので、明日からもやっていきたいです」。この時点では昇格も決まっていなかったが、笑顔とともに自信も取り戻したようだった。


平田虎は優勝へのマジックナンバー「2」とした。だが、1軍はといえば、4番・マルテが0-1の三回2死満塁で三ゴロに終わり、同じく1点を追う六回無死二塁でマルテ、大山、サンズでそろって沈黙するなど、中軸の背信が重く響いた。9月のチーム得点圏打率は・211となり、さらに4-6番に限れば・123(57打数7安打)の異常事態だ。5試合連続ノーアーチも今季ワーストタイとなった。今ほど、佐藤輝に爆発してほしいときはない。


矢野監督は「色んなことをチャレンジしたり、また色んな人にアドバイスもらったり、そういう時間を経て、また戻ってくる。リフレッシュして帰ってきてくれたら」と、ただただ願った。やはり、佐藤輝が天高くかざす打棒の先にしか、虎の栄光はない。