(セ・リーグ、阪神1-8巨人、19回戦、9勝9敗1分け、19日、甲子園)

ライバル巨人に完敗。しかも、終わってみれば一回の1得点のみ。最近3試合で2得点の打線の機能不全は解消する気配がない。評論家・土井正博氏(77)は6番・大山ら走者をかえす打者に「全打席打とうとしすぎ。一日一善でいい」と気持ちの部分でのアドバイスを送りつつ、「相手捕手との駆け引き」の重要性を説いた。

◆打線「線」ではなく「点」に

二回の一挙7失点で参考外の試合になった。決して調子のよくない菅野にも、外角中心の攻めでノビノビ投げられてしまった。ただ、攻撃陣が陥っている得点力不足は依然、重症のままだ。打線が「線」ではなく「点」になっているから、1点を奪うのが精いっぱいの状態が続いている。

現状のオーダーで1番から3番は十分に機能している。マルテを3番に戻したいが、代わりに4番を打てる文句なしの打者も不在。今は糸原が何とか「かえす」役割も果たしているから、マルテを4番にして、5番以降を糸井、大山、サンズ、ロハスらで日替わりになるのも仕方がない。

4番以降の打者、特に大山に顕著だが、全打席、ヒットかホームランを打とうと気持ちばかりが前面に出てしまっている。一日一善、4打席のうち一度、チャンスの打席のどこか一度打てばいい、ぐらいの気持ちで打席に入ればいい。

圧勝した巨人だって、二回の攻撃だけだ。どこかで一本打っておけば、とリラックスして打席に入ることを勧めたい。全打席打つ打者なんて見たことがないのだから。

◆「捕手との勝負」工夫が必要

ただし、どこかの1打席で打つための工夫は必要。私自身も経験したし、指導した何人もの打者にアドバイスを送ったのは「捕手との勝負」だ。投手は何人も交代してくるから、それぞれの球種に対応するのは大変。が、捕手は比較的少ない。その捕手と駆け引きをするのだ。

ある球種を狙っているような動きを見せて、次の打席で裏をかく。エサをまいて、1試合トータルで考え、勝負の1打席で仕留める。そんな戦い方もある。すべて打とうとする大山は、ほんの少しの切り替えで、一気に変わるような気がする。一日一善で十分なんだ、と。

もう一つ、重要なのは投手がこの日のように大量失点しないこと。接戦に持ち込み、元気な1番から3番を、一日一善の4番以降が、どこかでかえす。開き直ればいい。毎イニング、「線」になる必要はないのだから。