「阪神1-0中日」(18日、甲子園球場)


復活祭や…。高橋遥人投手(25)が7回2安打無失点の満点投球で、329日ぶりとなる今季初勝利を挙げた。4回6失点と期待を裏切った前回登板からのリベンジを果たし、10奪三振と竜打線をなで斬った。16年ぶりのリーグ優勝に向け、頼もしい左腕が帰ってきた。


青空の下、高橋が意気揚々と腕を振った。打者を次々と手玉に取る快感を抱きながら、7回2安打無失点の快投を演じた。「甲子園はやっぱり投げていて気持ちいい。抑えた時にすごく(感じた)」。329日ぶりの白星が今季初勝利となり、復活を印象付けた。


奪三振ショーの開演だ。初回1死から渡辺、大島をカットボールで空振り三振。ここからギアを上げ、六回まで毎回奪三振と中日打線を全く寄せ付けず。直球の質は「悪かった」と話しつつ、10奪三振には「できすぎかな」と自賛するほどだ。


得点圏に走者を進めたのも二回2死から高橋周に右中間二塁打を打たれたシーンのみ。圧巻の投球だったが、スアレスから勝利球を受け取った時、左腕に笑顔はなかった。


「本当はうれしいんですけど、今年もケガをしてこれだけ遅れて。今回が一番、苦しい時期が長かったんで…」


1年目から毎年のように故障で戦線離脱を経験したが、今年は特につらかった。顔で笑いながら心で泣いた日々。そんな時に励ましの声をくれたのが先輩たちで「励みになりました」。感謝を胸に先発し、最高の結果で応えた。


かつて『王キラー』と呼ばれた男から球界で生き抜く心得を学んだ。2017年度ドラフトで阪神から2位指名を受けた直後、元ヤクルトで通算93勝を挙げた安田猛さんと話す機会に恵まれ、大先輩左腕から金言を授かった。


「投手に一番大切なものはバランスだからな。下半身を鍛えて、しっかりとしたフォームを身につけなさい」


シンプルな教えだが、高橋の胸には強く響いた。「投手も野手も活躍されている人はバランスがいい。本当にそうだなと思った」。入団後、走り込みや体幹トレで全身の肉体強化に励みながら投げ込みを行い、バランスの取れたフォーム形成を目指してきた。


安田さんは今年の2月20日に胃がんで逝去。右脇腹の筋挫傷を負い、宜野座キャンプで別メニュー調整を続けていた高橋も「すごく残念です」とショックを隠せなかった。


『恩師』も秋晴れの空から高橋の快投を見ていただろう…。これからもプロの世界で活躍することが恩返しになる。矢野監督が「優勝のピースになり得る投手」と信頼を寄せる背番号29が、復活星を起点に熱投を繰り広げる。