(セ・リーグ、ヤクルト1-0阪神、20回戦、阪神11勝6敗3分、15日、神宮)


大山はチャンスに強いのか?弱いのか?


可能なら、全野球ファンにアンケートを実施してみたいと、ずっと思っている。


ちょっとけがをして、夏前に約2カ月入院したワタクシ。その時、病室の隣のベッドにいた熱狂的虎党のおじいちゃんが「あんな勝負弱い選手は見たことない」と怒っていたのが大山だった。


確かに14日の試合は、ことごとく期待を裏切られた。15日も、走者のいない二回に二塁打。肝心の走者一塁の四回に併殺打。六回一、二塁&八回一、二塁は四球という実に微妙な結末。チャンスに強いとは思えない。どう見ても弱いやろ…とワタクシも内心でおじいちゃんに賛同だ。読者に叱られるのを承知で。


「でも、弱かったら、この賞を受賞しないでしょ」


甲子園で2軍戦戦取材中のトラ番・原田遼太郎にいきなり叱られた。


発表された7、8月の「スカパー!サヨナラ賞」。大山が賞金30万円をゲットしていた。


対象となったのは7月12日のDeNA戦。九回の5連打を締めくくったサヨナラ打の記憶は鮮明だ。


「9月度も大山になるんじゃないですか?」


原田が追い打ちをかけてきた。根拠は今月4日の巨人戦。確かにあの逆転サヨナラ2ランにはしびれた。


最も勝負強さが求められる「サヨナラ賞」を連続受賞するかも、ということは、こんな勝負強い打者はいないのか。う~ん、野球は難しい。「老人の日」にふと思い出した、おじいちゃんの大山の話だ。


昭和の時代に教わった「日本の祝日」では、9月15日は「敬老の日」だった。今は「老人の日」と呼び方も変わり、休日ではなくなっている。とはいえ、この令和の時代になっても「9・15は敬老の日」と答えてしまう。そんな世代です。


『昔の祝日』を知らなかったり、忘れ去った世代にとって「9・15」は星野阪神優勝記念日となる。


目を閉じて、思い出しましょう。2003年。星野仙一に負け犬根性をたたき直され、闘争心を注入されたタテジマ戦士は、日本中に大フィーバーを巻き起こし、栄光のゴールに駆け込んだ。デーゲームで赤星憲広がサヨナラ安打を放ち、夜、ヤクルト敗戦を待って決めた、18年の空白を経ての優勝。闘将が宙に舞った甲子園。9月15日の夜だった。あれから、また18年の歳月が流れたことになるのか…。


タイガース史を語る上で、最高に縁起のいい日の一つ。昔を懐かしんで笑って過ごせばいいのに、そうはいかないのが、編集局内で「阪神が勝ってド派手な紙面」を作ろうと、ない知恵を絞っているヤツらだ。


当番デスク席に陣取る白石大地が、微妙な社内の空気を伝えてきた。


「紙面総括席で、(整理部長の)矢田(雅邦)さんが『昼間から縁起が悪いなぁ』『縁起が悪すぎる』とボヤいているんですよ」


原因は何や?


「ファームの連勝記録を更新し続けてきた阪神2軍がついに負けたからなんです」


苦笑いの白石デスクに、こっちまでつぶやいてしまう。「ぜいたく言うなよ」と。19連勝ならず。立派なもんや。


それより、1軍やろ?大山が9・15に決めていれば、カッコ良かったんだけどなぁ。改めて思う。勝負強くはない。