阪神が今秋ドラフトに向けたスカウト活動において、プロアマ規定に違反していたことが発覚した。担当スカウトが天理の達孝太投手とプロ志望届の提出前に面談に臨んでいたことが判明。15日、日本高野連が審査委員会で協議し、緊急のオンライン会見で、同校の笠井要一野球部長(35)と中村良二監督(53)に厳重注意措置の指導をすると発表した。


達は193センチの長身右腕で、最速148キロを誇る。3月のセンバツで4強に導き、一気に株を上げた。阪神も10月11日のドラフトの有力候補に挙げる。ほれた逸材に熱意を伝えるのはスカウトの使命だが、拙速の面談になってしまった。


プロ入りを希望する選手はプロ志望届の提出が義務づけられ、規定でプロ球団との交渉解禁は所属の都道府県高野連に提出した翌日以降となっている。その日以前のプロ関係者の高校球児への接触は日本学生野球憲章で制限する。8日の一部報道が発端になって高野連は聞き取りを開始した。


達は、かねてプロ志望だった。尾上良宏審議委員長(67)は「部長、監督は提出の後先を考えなくて面談が可能という、誤った認識を持っていました。故意はなく、誤った思い込み、誤った理解という注意義務違反、過失であったことは間違いない」と説明した。


担当スカウトは8月31日に同校を視察した際、調査書を受け取った同監督と面談の日程を調整し、9月7日に達とマンツーマンで面談に臨んだ。隣室には同部長が待機。その時点では達はプロ志望届を提出していなかった。奈良県高野連で受け付けられ、日本高野連ホームページに公示されたのは10日。阪神の早すぎるアタックが、規定に触れた。


尾上委員長は達について「部長と監督、指導者の指導にのっとって行動したのみ。責任を問うことはしない」と話し、不問とした。快腕の夢を絶たれなかったことが、何よりの幸いだった。阪神には、今日16日にもNPBから処分が出る見通し。前日14日には上位候補の高知・森木大智投手と面談した。ドラフトまで1カ月を切って準備を重ねるなか、痛恨の勇み足になった。