(セ・リーグ、阪神1-9広島、5回戦、広島4勝1分け、9日、甲子園)

早くも阪神は借金10。元阪神キャップで現運動部デスクの阿部祐亮は2年ぶりに昇格させた高山俊外野手(28)がベンチスタートだったことを残念がった。本来の力が戻ってきた2016年の新人王を使うのは今でしょ。積極的な起用でチームの起爆剤になることを願った。

モニター越しだが、久々に『いい顔』をしていた。栄光も挫折も味わった高山は543日ぶりの1軍に燃えていた。五回先頭で代打登場し、中前打。1-6という状況だっただけに残念だった。

この日の朝、高山が昇格するという一報が入った。40歳の糸井は延長十二回引き分けだった前夜のナイターでフル出場していたためスタメンは考えにくい。だとすれば高山がそこに入ると思って楽しみにしていた。

阪神は開幕から1勝11敗1分けと泥沼から抜け出せない。もちろん、長いシーズン、どのチームにも波はある。ただし、連敗をしているときほど監督力が問われるのも事実である。高山はウエスタンで打率・325。8日の広島戦は3安打と勢いがあった。打撃は水もの。今、代打要員ではもったいない。

記者として駆け出しの頃、どうしても忘れられない場面がある。2008年9月11日。朝から2軍の鳴尾浜で取材していると今岡が突然、荷物をまとめて虎風荘を飛び出した。打撃不振で再調整中だったが、関本が右肘を痛め、岡田監督が34歳の誕生日だった今岡に電話で昇格を伝えた。午後6時からのヤクルト戦に先発出場すると、一回に同点2ランを放ち、九回1死満塁でサヨナラの押し出し四球。今岡も、岡田監督の決断力もさすがだった。

起爆剤、ラッキーボーイというのは何も若い選手だけじゃない。壁にぶつかり、もがき、はい上がってきた2016年の新人王に懸けてもいいじゃないか。少なくとも矢野監督が大事にする「気持ち」は誰よりも出ていると見るのだが…。