もう07年の腎臓癌の克服辺りから、そう遠くない将来、この選手は引退してしまうだろうなあ、
と心配して居ました。
小橋建太は67年生まれで、私のひとつ年上なんで、小橋がまだ丸刈りで新人選手としてリングに
上がっていた頃から見て居ました。
顔も非常に「プロレス顔」と言いますか、いわゆる美男子とは違いますが、プロレスファンの好み
のいい顔をしていて、身長もあり、胸板が厚くて、これはすぐさま人気レスラーになるだろうなあ、と
思って小橋を見て居ました。
でも私は、織田信長タイプより明智光秀タイプの人に惹かれるので・・
藤波辰巳(当時)より長州力、タイガーマスク(初代)より小林邦昭、ジャンボ鶴田より天龍源一郎
三沢光晴より川田利明、という感じなのです。
したがって見た目カッコ良く、技も多彩で爽やかな小橋建太は元来、私の趣味では有りません(笑)
だけどね、やはり見ちゃいますよね、心配もしちゃうし応援もしちゃう。
それはもう小橋のプロレスに対する姿勢、小橋自身が自分に課す責任、実行力、人柄、これを25年も
ずーっと見せられたら、それはファンになりますわな。
確かに野球もサッカーも相撲もスケートも、色んなカテゴリーに素晴らしい選手や人材も居ますが
小橋建太も全くひけを取らない選手だと思います。
よくプロレスを解さぬ人々に「今、攻めればいいのに」「今、逃げればいいのに」と言われますが
相撲も横綱になると最初は自分からは責めないんですよ。
相手選手の良い部分も引き出し、ファンを沸かせる。大体、天龍選手なんか、やられてるその豪快な
やられっぷりがカッコ良かった位でしたから。
小橋も限界まで対戦相手の技を受けるタイプの選手でした。その試合スタイルがファンを感動させる
のですが、同時に自分の身体に深刻なダメージを蓄積していった訳です。
5月11日、武道館での引退試合の最後の技は、小橋の出世技でもあり、多用した為に自身の膝を
破壊してしまった技でもあるムーンサルト・プレスでした。
この技は見た目が華やかないい技なんですが、それを使う選手はまあ間違い無く自分の膝を犠牲に
するのです。捨て身の技を「肉を切らせて骨を断つ」と言いますがこれは「骨を壊して骨を断つ」
と言う様な技で、見方を変えると試合において自分だけ「いい所取り」をしない小橋らしい技で
もあります。
その自分の若い頃の決め技で引退試合に勝った小橋は、勝利者インタビューで「小橋さんにとって
プロレスとは何でしたか?」との愚問(笑)に「プロレスは自分の青春でした!」と如何にも小橋
らしい、小橋にしか言えない答えをしていました。
残念なのは、こんな素晴らしいプロレスラーの引退試合が、どうやら地上波では放映しない様なん
です。
ドキュメント番組でも良いので、是非日本テレビは企画をして、多くの人に小橋建太と言う
男、プロレスラーの生き様を知って欲しいと思いました。