RX-7。 
 
 
 中堅メーカーマツダがかつて3代に渡り製作していたスポーツカーである。
  

 因みにマツダの英語表記は「MAZDA」だが、これは初代社長の苗字と、ギリシャ神話に
 登場するクルマ(車輪)の神様、マズダーに引っ掛けている表記である。 
  

 ロータリーエンジンと呼ばれるピストンを持たない特殊過ぎるエンジン、(世界中でマツダのみ
 が生産している) それを搭載していた所がよくも悪くもセブンの一番の特徴だ。 
  
 
 ドイツ人のフェリックス・バンケル博士が、NSUと言う自動車メーカーをパトロンに研究を  
 進めていた、60年代当時における、未来のエンジン。 
 
 
 その試作機と特許を当時、世界中のメーカーがこぞって買った。 
 
 
 今で言うと、燃料電池の雄、カナダのバラードみたいなモノかも知れない。 
  

 しかしその試作機と理論は余りにも未成熟、使い物にならないと分かると世界中のメーカーは  
 手に負えないと、誰も居なくなった・・・。 (そして件のNSU社はアウディに吸収され、
 あの4社合併を表す4連ワッカマークのどれかになってしまったのだ・・・) 
  

 そのロータリーをど根性でキチンとしたキカイに仕上げ、市販化したのが唯一マツダであった。
  

 ローターと呼ばれる三角オムスビみたいな部品が、トロコイド曲線と呼ばれるまゆ型をした
 内壁ハウジングの中を、燃料の爆発により円運動を起し、その力が直接車輪を回す。 
  

 一般的なエンジン・・・、ピストンの上下運動をクランクを経て円運動に換え車輪を回す~
 より高効率で、エンジン本体も小さく造れる。 
  

 その歴史と広がりは・・・。
 

 1967年のコスモスポーツに搭載された「10A」型エンジン。
  

 1969年の「13A」(初代FFルーチェでのみ採用され、製作数は僅か1000機) 
  

 1970年の「12A」 
  

 1973年の「13B」 
  

 1990年の「20B」
  

 全種合わせても67年から08年の40年間でたった5機種、何と言う少なさであろうか。 
  

 その排気量は。 
  

 「10A」が491cc×2。 (×数字はローターの数) 
  

 「13A」が655cc×2。 
  

 「12A」が573cc×2。
  

 「13B」が654cc×2。 
  

 「20B」が654cc×3。  
  
 
 
 要するに「13B」搭載のRX-7は「1300ccターボ」でRX-8は「1300cc」なのだ。 


 そして一般エンジンで言う所の内部数値(ボア&ストローク)みたいなモノは、
 偏心軸の中心とローターの中心距離を示す「偏心量e」とローターの中心から三角オムスビの
 頂点までの距離「創成半径R」で示される。 
 
 これの数値が、40年間のロータリーの歴史で例外(短命の13A)を除き全て同一なのも
 驚きだ。 91年にル・マン24時間レースを制したレースカーでさえ例外では無い。
   

 「e=15㎜」
  

 「R=105㎜」  

 
 67年発表のコスモスポーツ「10A」も最新のRX-8の「13B」も同一なのである。
  

 この数値がマツダが探り当てた、ロータリー・エンジンの最適数値、実践の正解と言われている。 
  

 ロータリーエンジンにはお手本が無い。 
 
 
 世界中で誰も最早このエンジンを開発していないからだ。 
   


 真っ暗な空間を・・・、それは四角なのか丸なのか、その輪郭すら分からない真っ暗な空間を
 手探りで歩き出す、その方向すら正しいのか判らない。はっきりしているのは、振り返れば 
 先人達が構築した理論の道筋がそこにあるだけだ。先に進んだ者が居ないから道標は未来永劫
 に現れてはくれないのだ。
 
  

 この「e=15mm」「R=105mm」を導き出すのにどれ位の開発陣の努力があったのか・・・? 
 
  

 ロータリーエンジンは専用のラインで手組みで仕上げられているが、工員達は刃物の様な金属部品を
 組む際も素手で組んでいる。 
 
 少しのダストや異物の混入を防ぐ為であろうが、私も部品ラインで仕事をしていたが、素手で金属
 部品を持つのは怖い。かなり慣れていないと、手が切り傷だらけになり仕事にならないだろう。 
  

 これはオーバーホール時も同じらしく、私の敬愛するメカニックのN島さんも若き日のマツダの
 ロータリーの研修で、軍手をはめて立ってた若いメカが、講師のベテランメカに、
 

 「お前、軍手はめてロータリーやるって、舐めてんのかい?」
  

 と一喝されたのを見た事がある、と話てくれた。 
   

 愚直だ。 
  

 マツダロータリーの話は、造り手も組み手も皆頑固そうで、粘り強いイメージがある。 
 
 
 そんなこんなで私は以前から街行くRX-7がすごく気になるんである。 

 
 FCも大分少なくなり、FDもまあもともと少ないが、少し車高を落として、綺麗に乗ってる
 ヒトを見ると、「カッコイイな、漢だなあ・・・」と思ってしまう。だってガソリンもハンパじゃ
 無く高いでしょう? 
  

 外車みたいにある種の見得が張れる訳でもなく、オンナ受けも悪く、ハヤリでも無い。 
  

 自分が好きだから、高い維持費を払って転がしている・・・。
  

 これを漢と言わずして何と言おうか!  
   

 そんなワタクシですが、ロータリーエンジンは好きな特性ではない。 
 
  
 スムースだけど線が細く、神経質な感じが合わない。私はズボラな乗り手なので。
 
  

 自分にはRXー7は一生縁が無いと思う、が。 
   


 自分には合わないクルマだが大好きなクルマ・・・、少し畏敬の念を感じるクルマだ。
  

 あの低いボンネット、小さなキャビン。美しく控えめに膨らんだダブルバブルのルーフのライン。 
 
 
 美しいアウタースキンに包まれた、ど根性エンジンと頑固な設計哲学。
  

 あんなスゴイGT-Rが出て来て、「16X」と言う久々の新型ロータリーエンジンの
 アナウンスもありましたが・・・。
    


 次期RX-7に期待。