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 12月2日の「プロレスリング・ノア」の武道館大会を見てきました。 
   

 あるプロレスラーの復帰戦を見る為に、3年振りの武道館。
  

 そのプロレスラーが腎臓がんを告知されたのが昨年夏。 
  

 早期に発見できた為、摘出手術が成功すれば「普通の生活」に支障は無いと医師の判断が下った 
 らしいが・・・・。
  

 腎臓がんを克服して、命を取り留めても、その男は己の存在理由を「プロレスラー」
 に求める。 

 
 それも「絶対王者」「鉄人」と言われた自分を取り戻さなくては、彼にとっては意味が無い。 
  

 果たして12月2日武道館、男はかつての「プロレスラー」に戻って、帰って来れたのか? 
  

 試合はタッグマッチ。
 
 敵はGHC王者・三沢 光晴と秋山 準。
 
 男のパートナーは高山 善廣。 
   
 試合は一進一退の攻防・・・、流石に4人全員が超一流のプロレスラー。
 
 互いのうまみを存分に引き出しつつ、自らのカラーも出していく。 
 
 三沢のエルボー、秋山のジャンピングニー、高山のキック攻撃・・・。

 そして彼は試合後半、若手時代からの代名詞ポスト最上段からムーンサルト・プレスを繰り出した。 
  
 「行くぞーっ!!」の掛け声から右手の拳を握るいつものポーズに、久々に彼のファイトを見る
  観客は歓喜の歓声を上げる。  
  

 この技を彼が使う時、私はいつも心配してしまう。
  

 この技は男をスターに押し上げた技ではあるが、同時に彼の両膝を壊してしまった
 技でもある。 
 
 
 2001年から4回に渡る膝の手術で1年以上も欠場し、その復帰第一戦目でまた膝を壊す
 アクシデントから半年欠場した。 
 
 
 観る者を引き付ける流麗な技だが、使い手の消耗も激しい。 
  

 このムーンサルトで試合の流れを掴み、一気に三沢を必殺のバーニングハンマーで仕留めに掛かるが 
 不発に終わり、この失敗で試合の流れが彼のチームから三沢・秋山組に傾いた。
  

 最後は秋山のアシストから三沢の必殺技エメラルド・フロウジョン(ポスト上段からの雪崩式!)
 をまともに喰らい、男は自らの復帰戦に沈んだ。
 
  

 試合後、敗戦の弁、ファンへの挨拶も無いまま、敵の秋山と味方の高山が開いたロープを潜り、
 汗みどろの男は無言で花道を引き上げていった。  
  

 誰よりもプロレスを、プロレスファンを大事にする彼だが、試合に敗れた自分がマイクを
  握って、勝者を上回るファンの声援を受ける事を良し、としなかったのだろう。
   

勝者・三沢光晴のテーマ曲「スパルタンX」が流れ終わると、花道を去る男に彼のテーマ曲 
 「GRAND SWORD」が降りかかる・・・・・。 
   


ぺらぺらと反則の言い訳をしていた「ボクサー」家族や、事件数ヶ月後に悪びれた様子も無く
 ふてくされ、舌打ちを繰り返しながら会見をしていた「国技」の頂点。  

 
 「ボクシング」や「国技」と比べ「プロレス」を低く見たがる人が殆どだけれど。 
 
 
「プロレスラー」の彼の無言のプライドとファンへの感謝の心が、あの汗だくの後ろ姿にあった。
  

 超満員の武道館の1万数千人が一人の男の大きな背中にコールと拍手を送り続けた。 
  

 ビッグ・カンバックと言う言葉がそのまま当てはまるその男。
  

 彼はまた、帰ってきた。
  

 お帰りなさい。皆待ってたよ。 
  

 プロレスラー小橋 建太。