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今日はたまたま諸般の事情が重なり、トラでお店に出勤しました。
 
ヤオコーのガサガサ袋にグレープフルーツとか入れたのを、腕に下げて走ってるトライアンフ
って珍しいんでないかな・・・。
 
閉店時間の真夜中、R17の道際までトラを押して歩き、エンジンを掛ける。

キルスイッチをオンにし、燃料コックもオン。

ここでトラに跨り、チョークレバーを引き、シリンダーに差し入れたキィをひねる。 

セルフ・スタートの赤いボタンを押すと、バンッ!と空冷式、並列2気筒エンジンに火が入る。
 
しばしアイドリング。スロットルを小さく煽りながら、少しづつチョークレバーを元の位置に
戻す。 

キャブレターが落ち着き、エンジンの回転も一定の鼓動を刻みつつある時、シフト・ペダルを
1速に落とす。

メーターパネルのインジケーターの、ニュートラルの位置を知らせる緑のランプが消え、
ゴツン!というトランスミッションからのショックをにんまりと受け止めると。

ゆっくりとクラッチ・レバーをリリース。

ルルルルル・・・、とピストンの上下垂直運動がクランクで横になり、ギアを経てクラッチに繋
がり、スプロケットとドライブ・チェーンを介し、ゆっくりと確実に後輪に駆動力が伝わっていく。

その抵抗で、エンジンの回転数は下降していく。このまま何もしなければ、エンジン・ストール
エンストである。

クラッチをリリースするコンマ何秒か遅れて、右手でアクセルをひねり、キャブレターに相応の
ハイオク・ガソリンと大気を送り込む。

すると、ゆっくりとオートバイは動き出す。

真夏の夜の、濃密な空気の中をゆっくりと走り出す。

1速、2速、3速・・・。ガツーン!ガツーーン!!とオートバイは速度を上げていく。

風の音が排気音を消し去り、キャブレターが糖蜜の様に粘度を増した、8月の大気を吸い込む、 

「ヒュルルルルルル・・・!!」 

と言うキャブレターの甘い吸気音が、ヘルメット越しの鼓膜を震わせる。 

走り出して3個目の信号で当店のお客様と偶然出会う。

口パクで、クルマのウインドウ越しのお客様(ボブ平林)に「いま・帰り?」と聞く。 

大型トラックだらけのR17を、熊谷警察ん所を右折。R407を太田方面へ。 

R17から後ろにいたトレーラーも少し遅れて右折している、私のバックミラーに死ぬ程ゆっくり
交差点を右折している「彼等」が写る。 

見上げると右手に月が見える。

半月か・・・?オートバイの振動で、目に映る月の形がぶれて見える。

月は私とオートバイに付ききりで移動、私はまたその景色が楽しく、懐かしいものに感じる。

透過光式のメーター・パネルに端正なレタリングの数字、そして細く長い指針が踊る。 

40キロ・・・、50キロ・・・、60キロ・・・、70キロ・・・。  

前方に赤い信号の光が。私達は減速する。フロント・リアのディスクに、油圧ピストンが押し込む  
ブレーキ・パッドが摩擦熱を産む。慣性エネルギーが熱エネルギーに変換され、私達はその法則の下、 
停止するに至る。

信号待ちで件のトレーラーに追いつかれる。

巨大なそれは、私達の数メートル後方で静かに停止し、消灯までしてくれた。 

シロナガスクジラの様に大きな彼等は、小さく、不安定な私達にさえ敬意を払ってくれているらしい。

心使いの細やかなドライバーだ。 彼の優しい気持ちがありがたい。 

1分程の信号待ちに引っかかったのは結局、私達と彼等だけだった。

前方の信号が再び青になり、私とトライアンフはごく標準的に加速していったが、トレーラー
のヘッド・ライトは瞬く間にバックミラーから見ると小さな点へ変化していった。 

17の頃、夏の夜をオートバイで駆ける快感を知った。

オートバイのヘッドライトの可視光線と、メーターパネルの暖かい光。歯切れの良い排気音は、真夜
中の山道を、高速道路を、見知らぬ土地を、語らずして少年だった私を元気付けてくれた。

39の今、オートバイに跨ると何にも変わりようも無い、自分を改めてしみじみ実感する。 

程無くして、R17・BPとR407との交差地点を越えると、私達は左へ折れた。

24時間営業のスーパー、「SEIYU」

この時間に寄りこむと、お惣菜の餃子が5個入りひとパック75円で買えるんだい・・・。 

サンドイッチなんか半額なんだぞ。

なんか得した気分になれるんだ。 

小さいな・・・。