昨年12月13日に胃癌で亡くなられた、「I 編集長」井上 義啓氏の追悼本、
「殺し」を読みました。買ったのは太田のブックマンズアカデミー。 
 
熊谷の書店には置いてありませんでした・・・。ファンシー文具を売るコーナーがあるなら
本を置けい~~!!「ひとり日和」が泣いとるぞ!! 
 
享年72歳で亡くなられた氏は、現在は休刊となった「週刊ファイト」の初代編集長だった
方。 
 
プロレス本の編集長で有名だった「週刊プロレス」のターザン山本や、「週刊ゴング」の
「GK」金沢 克彦もかつては井上学校の生徒であった。
 
「プロレスとは、底がまる見えの底無し沼である」 
 
I編集長の言葉。私はこれ以上、的確にこのジャンルを言い当てた言葉を知らない。
 
ファンの思い通りに大技、見せ場を連続させるプロレスを「ファミコンプロレス」と言い、
そんな試合をノリで大騒ぎして見ているファン層を「平成のデルフィン達」と呼んだ、
この独特の言語感覚。
 
「最近のレスラーには(殺し)が足りませんよ!」
 
「あんな調整不足のレスラーならおれでも勝てますよ!!」ドンッ!!(机を叩く音)
 
もともとアントニオ猪木を追ってきたI編集長は、猪木引退後は自然と総合格闘技にも
その興味を広げ、プロレスと格闘技を大きくまとめて「プロ格」といい、バーリートゥード
「バード」と表現していた。この表現は、大手スポーツ新聞等でもコンテンツ名に
使っている。70歳を過ぎても光る言葉のセンス、新語を生み出す情熱。 
 
業界の大御所なのに新米編集者と会う時でも、必ずビシッとスーツを着ていたと言う。
新日本プロレスの30周年記念東京ドーム大会も「私流の敬意」としてYシャツからスーツ
をオーダーして観戦に臨んだという、I編集長独特のダンディズム。 
 
「アントニオ猪木と言うジャンル」に猪木本人以上に考察を加えたI 編集長。

「井上プロレス」とまで呼ばれる様になった氏の私小説は門外漢には難解だが、私には
その暗喩が大変興味深かった。 
 
だけど、週刊ファイトの編集長だったのに、業界の大御所なのに、人一倍、アントニオ猪木が
好きだったのに、職権でいくらでも友人関係にまでなれた筈なのに。 

「殆ど個人的な付き合いも無く、食事も一緒にした事が無いんだな」(I 編集長・談)
 
「井上さんとは勿論面識はあるが、殆ど何も知らないんだよね、距離を置いてるのが
分かってたから・・・」(アントニオ 猪木・談)
 
最高にI編集長にダンディズムを感じた一節です。ダンディズムって、やせ我慢の事ですから。 
 
「取材対象と仲良くなりすぎたら、おれは書きたい事が書けないんだな!!」 
 
脳内で深く考える、プロレス・格闘技好きにはオススメの一冊です。 
 
I編集長、井上 義啓さんの鋭い部分、オトボケな部分が存分に楽しめるでしょう! 
 
謹んでご冥福をお祈りいたします。