黒潮会・海鷲便(うみわしだより)

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右寄り保守系軍オタブログです。

ドナルド・トランプ米大統領は、空母に搭載された戦闘機発艦システムを撤去し、蒸気式カタパルトに戻すよう海軍に指示した。海軍当局者はこれに長年抵抗していた。この措置は数十億ドルの追加費用を要する可能性がある。米当局者らによると、トランプ氏は13日、この変更を指示する国家安全保障関連の覚書に署名した。この変更によって、ジェラルド・フォード級空母に搭載されている電磁式カタパルトシステムが撤去される。

 

これにより、トランプ氏は約10年前に行った公約を実行に移すことになる。同氏は第1期政権中に艦船を視察した際、乗組員から蒸気式システムの利点を聞かされ、蒸気式への回帰を約束していた。しかし、トランプ氏が2017年にタイム誌のインタビューで「いまいましい蒸気式」に戻るよう海軍に命じたと発言して以来、海軍および産業界の幹部らは、フォード級空母の設計に不可欠なこの複雑なシステムを撤去するには多額の費用がかかるとして、これに抵抗してきた。

 

今回の措置により、海軍は同級の4番艦(「ドリス・ミラー」と命名予定)および残りの全艦を再設計することになる。最初の3隻であるフォード、ジョン・F・ケネディ、エンタープライズは電磁式システムを維持する。トランプ氏は先月、ペンシルベニア州での会議で電磁式システムについて「全く優れていない、複雑すぎる」と述べていた。(WSJ)

 

 

フォード級の電磁カタパルトは技術的トラブルから信頼性に大きな不安があり米海軍の悩みの種となっていました。しかし、長い時間と多額の予算を投入してきた先端技術を米海軍が諦めるとは到底、思えません。電磁カタパルトはこれからの最重要かつ中核的な軍事技術の一つと言えます。戦闘機に例えるなら蒸気式がF-4ファントムなら電磁式はF-35ぐらいの技術的格差があります。

 

しかも、中国海軍は空母「福建」に電磁カタパルトを装備するなど国家の総力を結集して開発を進めています。建造が始まったとされる原子力空母にも電磁カタパルトを装備するのは必至の情勢です。

 

今回のトランプ氏の指示は海軍と新たな軋轢を生みかねないでしょう。

 

 

AIによる分析

 

米中が最新空母に導入している電磁カタパルト(EMALS等)は、導入初期に数々の問題点やトラブルに見舞われました。しかし、結論から言えば「蒸気式カタパルトへの回帰」という説は現実的ではなく誤りです。

初期の不具合は「次世代技術の黎明期における過渡的な問題」であり、運用の柔軟性や将来性(特に無人機運用)を考えると、電磁カタパルトへの移行は不可逆な技術潮流となっています。

米中における電磁カタパルトの問題点

1. 米国(ジェラルド・R・フォード級)の問題点

米国が開発したEMALS(Electromagnetic Aircraft Launch System)は、交流(AC)電力とフライホイール型蓄電システムを採用しています。

  • 初期の低い信頼性(MCBFの未達):

    設計目標である「射出間故障間隔(MCBF)4,160回」に対し、導入初期は数百回に1回程度の割合でトラブルが発生し、実戦対応力に疑問が呈されました。

  • 初期設計における冗長性の不足:

    電力変換器や制御系統の不具合が発生した際、1条のカタパルトの修理・メンテナンスを行うために全系統を停止しなければならない構造的欠陥がありました(後に改修)。

  • 過酷な洋上環境への耐性:

    塩害や艦の強い振動が、精密な電子制御機器やパワー半導体に与える影響への対策に時間を要しました。

2. 中国( Type 003「福建」)の問題点

中国は米国と異なり、中電圧直流(MVDC)システムとスーパーキャパシタ(急速充放電器)を組み合わせています。

  • 通常動力(非原子力)による電力負荷:

    米国と異なり「福建」は通常動力空母です。統合電気推進(IEPS)により大電力を供給しますが、艦載機を短時間に連続射出(ハイペースな打撃波)した際の発電能力と蓄電耐久性が実戦下で耐えうるかは未知数です。

  • 実戦・長期間運用の実績不足:

    陸上試験や各種艦上機(J-15T、J-35、KJ-600)の試射試験は進んでいるものの、長期航海や過酷な気象下での運用耐久性はまだ検証段階にあります。

なぜ「蒸気式への回帰」が議論されたのか?

「蒸気式に戻すべきだ」という議論が広まった背景には、主に政治的・報道上のインパクトがありました。

  1. トランプ前大統領の発言:

    在任中、フォード級のトラブル多発と膨大な開発コスト超過を目の当たりにし、「電磁式は複雑すぎる。アインシュタインでなければ扱えない。実績のある蒸気式に戻せ」と強く公然と批判したことが大きく報じられました。

  2. 初期トラブルの過熱報道:

    開発遅延や会計検査院(GAO)の厳しい報告書が相次ぎ、「欠陥技術」という印象が一人歩きしました。

蒸気式に戻れない(戻らない)5つの理由

技術的・構造的に見て、一度電磁式へ舵を切った近代空母が蒸気式に戻ることはできません。

比較項目 蒸気カタパルト 電磁カタパルト(EMALS)
出力制御 大雑把(高蒸気圧で急激に加速) 微細に制御可能(加速曲線を最適化)
機体への適合 重量級戦闘機向け(小型機は負荷で壊れる) 小型無人機(ドローン)~大型機まで対応
艦内スペース・重量 巨大な蒸気配管・アキュムレーターが必要 配管不要、省スペース・軽量化
運用準備時間 数時間の暖気運転が必要 即時起動が可能
補給依存(淡水) 1回射出ごとに数百kgの蒸気(淡水)を消費 淡水消費なし(電気のみ)

決定的な理由は「無人機(ドローン)対応」

今後の航空戦では、有人戦闘機だけでなく無人スウォーム機やステルスドローンとの連携が不可欠です。

蒸気カタパルトは「ドカンと強烈に打ち出す」ことしかできないため、機体構造が比較的脆弱で軽量な無人機を打ち出すと、機体が破損してしまいます。無人機を安全かつ柔軟に発艦させられる制御能力を持つ電磁カタパルトでなければ、将来の空母航空団は成り立ちません。

また、フォード級などの最新空母は高出力発電機を配備した全電化構造になっており、艦体内部に高圧蒸気パイプラインを通すスペースも設計も最初から存在しません。

結論と現在の状況

「蒸気式への回帰」は、過渡期のトラブルに対する一時的な批判や政治的パフォーマンスから生じたものであり、現実的な選択肢ではありません。

  • 米海軍の現状: フード級は発艦実績を数千〜万回単位で積み重ねており、初期のソフトウェア問題や給電ラインの改修を経て信頼性を向上させています。後続の「ジョン・F・ケネディ」、「エンタープライズ」もEMALSが採用されています。

  • 中国海軍の現状: 「福建」に続き、076型強襲揚陸艦などにも電磁カタパルトの搭載を進めており、後退する気配はありません。

初期故障を乗り越えた電磁カタパルトは、「次世代空母における不可欠な基盤技術」として定着しています。

 

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