「月とキャベツ」や「昭和歌謡大全集」の篠原哲雄監督の新作「小川の辺」の試写におじゃましてきました。2006年の「地下鉄(メトロ)に乗って」の公開時には、隅っこですが記者会見にも出席していたので、新作もとても楽しみ。


「小川の辺」公式サイトはこちら!

http://www.ogawa-no-hotori.com/index.html


 個人的にはあまり見ないタイプの時代劇、しかも主役は東山紀之、その妹役は菊池凛子です。彼女が時代劇に出演するのは、極めて稀じゃないかしら。私ははじめて目にしたような気がします。

キャッチコピーは「愛する人を斬ることなど、出来るのか。」。

家族ものって、見る前から体の奥に響いてくる独特なムードがあります。

 

【ストーリー】ネタバレはなし

 東山演じる主人公は、海坂の藩士で、戊井家の家長です。菊池凛子演じる妹の田鶴(たず)の嫁ぎ先の主人が脱藩したことから物語ははじまります。主人公は、脱藩した罪人を裁く役目を任されます。しかし、自分の妹の嫁ぎ先だし、脱藩した佐久間は主人公の友人でもあります。佐久間を討つとなれば、その妻、つまり自分の妹と刀を交わす事態にもなるかもしれません。その役目は勘弁被りたいと申し出ますが、聞き入れられず、心配する両親と細君を置いて主人公は江戸へと出発します。

 

 このときに旅のお供をするのが勝地涼演じる新蔵。戊井家に生まれ、兄弟と共に育ち、長年仕えてきた若党です。彼は、もちろん主人公を兄のように慕い、その役に立ちたいから旅の共を申し出ました。しかし、それとは別に、秘かに田鶴への恋心を抱いていました。兄が妹を討つことがないように、そんな悲しい事態を絶対に起こさないように、そんな思いを胸に1歩1歩山道を踏みしめていきます。

 

 いよいよ、江戸で妹と兄が対面します。そこで3人が選ぶ行く末は…。

 

【感想】

妹の旦那で、自分の親友を討つ、それが避けられない任務である。

そんな状況、今の世の中では考えられない、地獄だと思います。


そんな とても切迫したシリアスな役目を背負った道中ですが、音楽や途中ですれ違う人々の様子、自然の風景など、とても伸びやかな映像が展開されます。風や水の音が美しく、普段都会で過ごしていると、こんな音に耳を澄ませる瞬間が思った以上に少ないことに気がつかされます。この辺りは見ているこちらも、悲しい未来なんて待っていないのではないかとほっと胸をなで下ろせる時間です。

 

 配給会社の東映の方もおっしゃっていましたが、東山さんの姿勢や所作の美しさに目を奪われます。脇を固める笹野高史や松原智恵子、藤竜也など名優の演技も見もの。

 

「地下鉄(メトロ)に乗って」もSalyuの主題歌と堤真一、岡本綾、大沢たかおの演技力の幅を広げた名作だと思います。こちらもあわせてご覧になると、この監督の人間の奥深さをきちんと描く才能に気づけること間違いなし。