位牌持ちとは、長男坊の事である。

母の葬儀を済ませ、様々な事を学んだ。

位牌持ちは、決断の連続である。

周囲から様々な意見は出て来るが、最後は自分だ。

意識のある内に、自宅に帰る事にした。

昨今は、病院や施設で亡くなるのがほとんどだ。

死に際に立ち会える機会は少ないと聞く。

母は、家に帰り安心したのか、早かった。

曾孫の手を握り、数分後に息を引き取った。

仏壇のリンを枕元で鳴らし続けた。

これは仏様を迎える事と、魔者を遠ざける意とか。

次に茶碗に水を汲み、脱脂綿で口元を湿した。

これはお釈迦様が入滅の時、水を欲した事に由来するらしい。

また、この世で最後の食事との意も。

更に、死者が蘇る事を願う意もあると聞く。

こうすれば安心して旅立てると、長老に教わってきた。

取りあえず、そこに立ち会った者だけで行った。

次に湯灌。

今では、病院等で殆んどやっているようだ。

自宅の時は、納棺師が行う。

これは、近い家族が揃った中で行った。

子供、孫、曾孫達で、アルコールを含んだ脱脂綿で体を拭いた。

女房は、口元に、淡い紅をさしていた。

手を合掌に組ませて数珠を持たせる。

これで病人として、一日寝てもらう事にした。

ここまでの事が、近い親類家族で出来た事が良かった。

死と言うものを、まじかで実感させる事が出来た。

子や孫、曾孫はどう感じたか? 今は解らない。

だが、この先で、何かを感じてくれるのではないか?

これは、そうさせた母の最期のプレゼントだった様に思う。

長い様で、短い96年7カ月でした。

ありがとう・・・そしておつかれさまでした。

         安らかに・・・ 位牌持・寅次郎
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