山本一力が初めて書いた長編小説。

20年前に書いて長編新人賞に応募したが落選。

後に、読み返したが、未熟で荒削りだった由。

9年前に、修正を加え単行本として世に出た。

しかし、原型は崩さなかったらしい。

何故なら、崩せば、その年代の自分を否定するからだ、と。

彼の時代小説の出発点は“大川わたり” だと言う。

一力の小説はカッパエビセンだ。

止められない!止まらない!だ。

今回も一気に読んでしまった。

寝不足だ!

言葉も覚えた。

“女衒”(ぜげん)女を喰い物にする男。今風に言えばひも。

“野分”(のわけ)秋に吹く激しい風。今風に言えば台風。

物語の区切りに、自然の風景描写が一行加えられる。

*おやすが立っていた場所に、淡い残り香が漂っていた。

*すでに陽が落ちていた。座敷を弥生の夕闇が包み始めている。

*柳花と新三郎の寝屋から聞こえ始めた荒い息にあわせて、

風鈴がちりんと潤んだ音を響かせた。

*木場の掘割を渡ってくる夕風が、松の小枝をさわさわと揺らせた。

*夏の夜の生ぬるい風が、京橋から炭町に流れて来た。

*番小屋のそばで立ちつくした喜作のうしろで、野分の風が舞った。

*野分が離れの外で吹き荒れていた。

*親父の後ろで、巣に急ぐ都鳥が鳴き声を散らしていた。

まだまだあったが、その場の情景が頭に浮かんでくる。

ふうてんの寅のエンデングは、決まって青空の遠景が多い。

自然の風景描写は想像を豊かにする。

つるべ落としの夕闇に山寺の鐘がなった。

               晩酌だ! 寅次郎
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