『水戸黄門』(第40部)の部分的なお話です。(^ω^)




【登場人物】 と 【あらすじ】


【原作】 『水戸黄門』(第40部)
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【プロット】 衆道疑惑


ある日、新助が冗談で助さんに「格さんとジュンギが親しすぎる関係にある」と吹き込む。


その直後、タイミングの悪いことが重なり、助さんは新助のデマをすっかり信じてしまう。


そして、助さんが格さんに真偽を確かめに行く。



助さん、格さんにそれとなく話を切り出す。


助さん 「格さん、アイツ(ジュンギ)の剣の腕前はどうだ。」


格さん 「うむ。なかなかの上達ぶりだが、まだまだだな。」


助さん 「そうか。


ところで、格さん。アイツとの、


その、なんだ、


付き合いはうまくいっているのか。」


格さん 「付き合い?


ああ、別に、何も問題はないが。」


助さん 「そうか。うまくいっているのか。


(助さん、安心したように頷く。)


生真面目一辺倒の格さんにそんな一面があるとは知らなかったが、


うまくいっているのなら、問題ないな。


しかし、格さん。 『そのとき』には、どうしているのだ。」


格さん 「そのときとは、一体、どんなときだ。」


助さん 「そのときと言ったら、そのときに決まっているではないか。


いや、別に詮索するつもりはないのだが、その、なんだ、


うまく行っているのかと思ってだな。


例えば、なんだぁ、その、例えば、アレなどは十分に持っているのか。」


格さん 「アレとは何だ。」


助さん 「アレと言ったら、アレに決まっているではないか。


アレだ。 つまり、『練木』だ。」


格さん 「ねりぎ? ねりぎとは何だ。」


助さん 「格さん。 練木も知らないのか。」


格さん 「はて、ねりぎなるは知らんが、知らんと恥ずかしいものなのか。」


助さん 「いや、知っている方が恥ずかしいのだが。


ともかく、知らんところを見ると、使っていないようだな。


では、お前たち、いつもどうしているのだ。」


格さん 「どうもこうも、俺たちは剣の道に励むばかりだが。


俺には助さんの質問の意味がよく分からん。


そもそも、ねりぎとは何だ。


気になるではないか。教えてくれ。」


助さん 「うーむ、しかたがない。


練木とはな、トロロアオイの根を乾かして粉にしたものでな、


水に溶くと、ぬるぬるになるものなのだ。


別名、『通和散』とも言う。」


格さん 「つうわさん?


何やら、聞いたことがあるような気がするが、思い出せん。」


助さん 「ええい。面倒くさい男だな。もういい。


とにかく、俺が一袋分けてやる。


これを使え。」


助さん、懐から、練木を紙に包んだものを格さんに手渡す。


格さん 「おお、済まんな。


何に使うのかは知らんが、ありがたくいただいておこう。」


格さん、練木が入った紙包みを印籠にしまおうとする。


助さん 「おいおい。格さん、何てことをするんだ。


そんなところにしまう奴があるか。」


格さん 「薬を印籠にしまって何が悪いのだ。」


助さん 「いや、それは薬ではないのだが。」




そこへ黄門がやって来る。


黄門 「格さん、どうも腹の調子がよくないようです。


印籠をしばし貸していただけますかな。」


格さん 「はあ。どうぞ。」


黄門が受け取り、消えてしまう。




助さん 「おいっ!


格さん、御老公にお渡ししてどうするのだ。」


格さん 「御老公にお渡ししてはいけなかったのか。


何か、毒にでもなるのか。」


助さん 「いや、薬にはならんが、毒にもならん。」


格さん 「そうか。それなら安心だ。


ところで、話は戻るのだが、そのねりぎなるが、俺とアイツの剣の道と何の関係があるのだ。」


助さん 「誰が剣道の話をしているのだ。」


格さん 「では、何の話をしているのだ。」


助さん 「(声を潜めて) 衆道だ、衆道。


衆道の話をしているのだ。」


格さん 「修道?


俺とアイツは確かに修道に励む間柄ではあるが。」


助さん 「何ぃ、衆道に励む間柄だとぉ?


(真相を知り、しばし落ち込む、助さん。)


やっぱり、そうだったのか。」


格さん 「しかし、武士が剣の修道に励んで何が悪いのだ。」


助さん 「剣の修道?


あーあ、違う、違う。


そちらの『しゅどう』ではない。」


格さん 「そちらの修道ではない?


では、どちらのしゅどうなのだ。」


助さん 「衆道だ、衆道。


ええい、面倒な男だ。


よいか。」


助さん、手のひらに書いてみせる。


助さん 「衆」


格さん、真似してみる。


格さん 「衆?」


助さん 「道」


格さん 「道?」


助さん 「衆道。」


格さん 「衆道?」


格さん、しばし、思考中。


格さん 「衆道!


おお、そちらの衆道であったか。


ようやく、分かった。 はっはっは。」


助さん 「ようやく分かってくれたか。よかった。


(つられて笑う助さん。)


はっはっは。」



バッシュ!



格さんの剣が、助さんに振り下ろされる。


助さんが真剣白刃取りで受け止める。


助さん 「格さん、いきなり何をする。」


格さん 「助さん、そこに直れ。


手打ちにいたす。」


助さん 「何故、俺が手打ちにされなければならんのだ。」


格さん 「貴様、俺に何てことをさせてくれたのだ。


御老公にさっきのモノをお渡ししてしまったではないか。」


助さん 「だから止めたではないか。」


格さん 「もはや印籠の件は取り返しがつかない。


助さん、あとで俺とともに腹を切るのだ。覚悟しろ。


その前にだなぁ、俺がいつアイツの念者になったというのだ。


で、あいつがいつ俺の若衆になったというのだ。


貴様、ずっと、俺たちをそんな目で見ていたのか。」


助さん 「何だ、違うのか。」


ようやく目が覚めた助さん。


格さん 「違うも何も、一体、誰からそんないい加減な話を聞いたのだ。」


助さん 「いや、何、新助がな。」


格さん 「新助が。」


ふたりが視線を向けると、遠くで、新助が二人のやり取りを見て、くすくす笑っている。


格さん 「そうか、アイツが真犯人か。


助さん、済まなかった。


あやうく、お前を殺めるところだった。」


助さん 「格さん、分かってもらえてうれしい。」


助さんと格さんが見つめあい、頷く。




新助、二人が手を組んだのを見て、逃げ出す。


格さん 「待てーい、新助。


今日という今日こそは勘弁ならーん。


叩き斬ってくれる。」


助さん 「いや、格さん。俺に殺らせろ。討つのは俺だ。」


新助 「たーすけてー。」



三人の様子を遠くから、お絹、ジュンギ、早月が見ている。


ジュンギ 「お絹姐さん。


で、結局、練木なるもの、何に使うのでしょうか。


助さんはトロロアオイとか仰ってましたが。


私は野草と漢方薬を研究しているものですから、ぜひとも興味があります。」


早月 「私も知りたいです。」


目を輝かせて年長者に質問をする、興味津々の若い二人。


お絹 「二人は知らなくてもいいのよ。


まだ、子供なんだから。」


ジュンギ 「しかし、ここまで話を聞いた以上、知らないで済ませる訳には行きません。


ぜひとも、教えてください。」


お絹 「アレはねえ、


助さんみたいな、どうしようもない遊び人の男性や、


枯れた女性が使うものよ。」


ジュンギ 「では、お絹姐さんも使用してらっしゃるんですか。」


お絹 「なあんですって。」


チャキーン。


(↑小刀が光る音。)


ジュンギ 「?????」


早月 「お絹さん、殺生はいけません。


ジュンギさん、早く逃げて。」





浜辺を新助が走っている。助さんと格さんが追いかけていく。



♪ ジャッ、ジャジャジャジャ ジャジャジャジャ 


  ジャジャジャ ジャジャジャ ジャジャジャ 


  じーんせーい らーくあーりゃ くーもあーるさー


  なーみーだーのあーとにーは にーじもでーるー



その後ろを、ジュンギが走っていき、そのあとをお絹が追いかけていく。


ジュンギ 「たーすけてー。」


お絹 「待ちなさーい。」


ジュンギ 「待てませーん。(´;ω;`) 」



♪ あーるいーてー ゆーくうぅんーだー しぃかりーとー


  じーぶーんのー みーちを ふーみしーめーてー


  「ああ人生に涙あり」 (作詞:山上路夫)




その様子を遠くから見ている黄門様と早月。


黄門 「若い人たちは元気があっていいですな。」


早月 「でも、前回と同じオチだわ。」



(以下、続く。)



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