わしはあんたが好きじゃった。


恋はまだわしの心のおくで消えはててはおらんのじゃろう。


ほいじゃがわしは願うわ それがもうあんたの胸をかき乱さんようにの。


わしは どがあなことじゃろうと あんたを悲しませとうないんじゃ。



わしはあんたが好きじゃった。


ものおじばっかりしてから 疑うてはもだえてから


言葉もなあ 望みもなあ ほんまの気持ち やさしい心でからの。


いまわしは祈っとるよ。あんたがほかのもんからそがあな心で愛されとることを。



「わしはあんたが好きじゃった」(1829年) アレクサンドル・プーシキン
(金子幸彦訳からの孫訳)