大学一年のとき、ある科目の一番最初の授業を受けました。

ところが、初日だというのに、学生たちが非常にがやがやとうるさかったのでした。

ついに、授業の途中、温厚な老教師が怒って叫びました。


「いいかげんにしなさい!どうして、いつも君たちはそうなんだ!」


すると、生徒たちはシーンと静まり返りました。


しかし、僕は、しばらく一人で考えていて、「あれ?」と首をひねりました。何故なら、私たちはその先生とはこの授業が初対面だったからです。だから、「どうして、いつも君たちはそうなんだ!」っていわれても、まったく身に覚えがないわけです。それで、僕は、「初対面の僕たちが、この先生に、そういう怒られ方をするのは、不当なのでは?」と考えました。しかし、結局、僕は、その老教師に対して反論する気が起きませんでした。何故なら、僕自身、先月まで受けていた高校の授業において、やっぱり、同じようにがやがやと騒いでいたからでした。


お互いに初対面なのに、「どうして、いつも君たちはそうなんだ!」と言う先生と、そう言われて違和感のない学生たち。

どうも、人間関係において、こういうことってありますね。


似たような経験で、こんなこともありました。


僕が今のマンションを購入したばかりの頃。

僕のマンションの近くには国会議事堂とか首相官邸とかあるので、黒塗りのハイヤーが多いんですよ。で、入居当時、非常に困ったのは、このハイヤーの、マンション前での無断駐車。駐車するだけならいいんですけど、何しろハイヤーなので、必ず運転手さんが乗っているんですよ。で、彼らも、夏は暑く、冬は寒いもんだから、必ず車内に冷暖房をつけるために、駐車中ずっとエンジンをかけっぱなしなんですよ。おかげでうちのベランダは真っ黒。通気孔のフィルターも真っ黒。このままでは肺がんになってしまう。僕は怖くなって警察に電話したんですよ。「黒塗りのハイヤーが邪魔だからどけてくれ」と。

で、しばらくすると、その車がいなくなったんですよね。で、よかったなあと。

ところが、しばらくして、また同じ車が。

「くー、おまわりさんの指導を聴いてなかったのか」と思って。

また警察に通報しようと思って、念のためにナンバーを確認しに行ったら、別の車でした。どうも、前の車が移動して場所が空いたから、入れ替わりに別の車が入ってきたらしい。

で、再度、警察に通報したら、また別の車が・・・。結局、同じことの繰り返し。いいかげん頭が痛くなって、通報するの止めました。

僕から見たら、同じ車が何度もしつこくやって来ているようにしかみえないのですけど、運転手さんから見れば、「ちょっと止めただけですぐに警察がすっ飛んできたぞ。何で俺が?」ってな感じだったんでしょうね。


また、こんな話も聞いたことがあります。


あるところに、ひとりの男性がいたんだそうな。

で、その男性はある女性を好きになったんだそうな。

で、ある日、彼は彼女に愛の告白をしようとしたのだそうな。

ところが、相手の女性はその話も聞き終わらないうちにこう言ったのだそうな。


「昔、同じことを言って、告白をした男性がいた。でも、結局、彼にはこういう下心があって、結局こうなった。だから、あなたのお気持ちを受け入れられない。」


そう言われた男性はすごすごと引き下がっていったのだそうな。

と言うのは、男性の方にも同じような経験があったらしいのですね。


結局、その男性は自分自身の想いを伝えられないまま、その女性に締め出されて、彼女とはそれ以上心から触れ合うことが出来なかったのだそうな。


人間関係って、難しい。


必ずしも、この私だけがこの世の中に生きているわけではないのですよね。

世の中には、自分と同じような人間がたくさんいて、私が知らないうちに、たくさんの悪行を犯している。そのために、こちらは身に覚えのない罪をしばしば負わされる。

なんとも不当な話だと思うのですが、そういう自分自身、やはり他の人に迷惑をかけるようなことをしたまま、尻も拭かずに逃げていたりするわけです。


「僕はその人じゃない」と心に思いながら、そう言い切れない自分がいる。


自業自得ですね。

(別のブログからの再掲載)