僕は美少年ではないですが、以下の文章における「僕」を美少年だと想像して読むと、一段と面白いでしょう。



僕は、最近、疲労が溜まっていて、とてもしんどい状態が続いていました。

で、ある日、あんまりに筋肉痛がひどいので、いつもの指圧屋さんに行こうと思ったんですけど、すでに23時を過ぎていて、お店が閉まっていました。


仕方がないので、近所にある24時間営業のマッサージ屋さんに行きました。僕は指圧の方が好きなんですけれど。

このお店はおしゃれな外観をしていて、若い店員さんが多く、男女が入り乱れています。なので、担当になる人は男性だったり女性だったりします。さらに、その内容は人によってまちまちで、ストレッチの仕方を講義してくれる人もいれば、ただひたすら指圧をしてくれる人もいます。


先日、担当していただいた方は、あまりイケメンではなかったのですけど、髪型や眼鏡がおしゃれなお兄さんでした。

で、このお兄さんに体中にマッサージを施していただいたんですけど、気になったのは、このお方、息が荒いんですよね。

僕の背中のツボを押すたびに、はぁー、はぁー、と息が聞こえて、ちょっと怖かったです(笑)。


で、最後の五分くらいで、そのお兄さんが僕に細長いベッドにまたがってくれと言いました。

言われたとおりにまたがると、彼も同様にして僕の後ろにまたがりました。で、どうするのかと思っていると、後ろからいきなり僕を抱きしめました。

抱きしめられたとき、何か硬いゴム板のようなものが背中の上部に当たったので、何かと思ったら、彼の分厚い胸板でした。その人は白衣を着ていて、見た目には分からなかったのですが、どうも運動をして体を鍛えているようでした。


で、彼が僕を抱きしめてどうするのかと思っていると、彼は僕に、

「両腕をあげてください。」

と言いました。

それで、言われたとおりにばんざいをして両腕を上げると、彼が僕の両腕に自分の両腕を絡ませてきました。僕は抱きしめられて身動きが出来なくなりました。

その状態で、彼はふたりの両腕をぐるぐると回し始めました。

そして、僕に尋ねました。

「どうです、気持ちいいでしょう?」

「はあ、なんとなく。」

僕は答えました。


胸板の厚い男性に後ろから抱きしめられて、両腕をぐるぐると回されて、僕はこう思いました。


「女性が男性に抱きしめられているときって、こんな感じなのかしら。」


僕は男性であって、同性を愛する者ではないので、生まれてこの方、女性を抱いたことはあっても、男性に抱かれたことはないんですよね。

で、今回、初めて男性に抱かれたわけですが、何と言うか、妙な感じでしたね(笑)。

女性はみんなこんな感じなのかしら。


あと、背後から男性に抱きしめられていて、もうひとつ思ったことがありました。


「女性にとって、男性の顔ってどうでもいいのではないかしら。」


僕は、昔から、男性も男性から見た女性のように顔が美しくなければ、女性にはもてないんじゃなかろうかと思ったりしたことがあるんですよね。でも、いざ自分が男性に抱かれてみると、抱かれる側にとっては、顔なんてどうでもいいんじゃなかろうかということに気が付いたのですよ。

なあんだ、男は顔じゃないのね。女性の皆さん、僕はもう分かりましたよ。


10代の頃、よくこんな話を聞きました。


「男性は女性に対して視覚的に興奮するが、女性は男性に対して視覚的には興奮しない。もっと精神的なもの、例えば、ムードなどに興奮する。」


当時、僕は上の言葉の意味がよく分かりませんでした。でも、ようやく分かってきました。なるほど、女性が雰囲気を好むというのは道理ですね。また、男性においても、成熟するにしたがって、そういう方向に傾いてくるのではないかしら。


例えばですが、もし、自分が、見ず知らずの美しい女性と裸で抱き合えるのと、昔から想いを寄せていた女性とふたりっきりで公園のベンチで過ごせるのと、どっちがいいかといわれたら、10代の頃の自分だったら前者をとっていたと思うんですよ。でも、今は圧倒的に後者の方がいいですね。好きな女性とふたりで寄り添って時間が過ごせるのならば、他には何もいらないでしょう。
ずっと好きだった女性と抱き合って、彼女の華奢な感じ、体の温かさや服の柔らかさ、髪の匂いなんかが伝わってきたら、それだけで幸せなのではないかしら。


もっと言えば、例えば、ある男性がいて、10年間、ある女性に片思いをしていたとしますよね。で、あるときにその女性に想いを伝えたとしますよね。そのときに、その女性が嫌がらずに手を差し伸べてくれて、握手をしてくれたら、とても幸せなのではないかしら。それこそが男子の本懐というものなのではないかと思うのですよ。


なんだか、そんなことを考えたりしました。
 

(別のブログから再掲)