小説 ファイナルファンタジー零式
月島総記




PSP用ソフト「ファイナルファンタジー零式」の公式ノベライズ作品。
著者は、「ルートダブル」「リベリオンズ」の月島総記さんです。


いやあ、素晴らしいノベライズでした!
文章の安定感は最早言うに及ばず。
FF零式という物語を、これ以上ない形で描いた小説化と言って良いのではないでしょうか。

私は、FF零式を今の所21世紀最高のFFだと思っています。
キャラクター、物語、世界設定、システム、音楽、やりこみ要素……
どれを取っても一級品です。
それでも、世間的には賛否両論あります。
高めの難易度はライトユーザーには辛い部分があるのは確かですし、「ファブラノヴァクリスタリス」構想の一翼を担う作品として考えると繋がりが不明瞭だというのも解ります。
ハード過ぎる世界観が受け入れられない、という話も聞きました。

しかし、そのどれもが私にとって作品価値を大きく減じる物ではありませんでした。
それ以上に、涙を流して見届けたエンディングや、最強の敵を倒して得た感動が忘れられません。

唯一、物語の見せ方への批判だけは首肯できる部分がありました。
ゲームという媒体であるが故に流れる時間はコントロールできず、結果として多少不自然だったり説明不足に感じたりする所も。

そういった不満を持った方にこそ、この小説はフィットすると思います。

この小説は作品世界を非常に上手に補完してあり、ストーリーや世界観の純然たる流れを追える作りになっています。
そして、改めてこの作品の真なる強度を確認できます。

何でも、筆者の月島さん自身が久々にどっぷりとゲームにハマったのがFF零式であり、作品愛が込められているようです。
豊かなキャラクターの掛け合いを見ていれば、その事は自然と伝わって来ます。

原作には無くともく、実に0組の彼ららしく、彼らならこう言っただろうなぁと納得させられる会話が満載で、本当に素晴らしい補完です。
個人的にはエースとイザナ、ナインとサイス辺りのエピソードが大好きです。
月島さんは、今作の執筆を通して、キャラ単体ではなくキャラ同士の掛け合いを通して引き出される魅力を学んだそうで、それはありありと「リベリオンズ」に活かされていたなぁと感じました。

そして、この作品が素晴らしいのは、原作をプレイした人が単にストーリーを追体験するだけに止まらない楽しみを得られる事です。
月島さんの作品において常に大きな意味を持つアレが今回も……。

原作ファンとしては、まず原作をプレイしてから小説に入って欲しいと思いますが、或いは小説を読んでから原作に入って行くのも大いにアリだなぁ、と。

ここまで優れたゲーム作品のノベライズは、幼少期に読んで思い出補正が掛かっている「ドラゴンクエスト」のノベライズ位ですね。

とりあえず、読んでいてもう一度FF零式をプレイしたくなる事頻りでした。
FF零式を好きな方は必読と言えるクオリティですね。

月島総記先生への畏敬を深めるには十分でした。


85点。


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という訳ででもないですが、明後日はエースのコスをして来ます(^-^)