シアター!〈2〉
有川 浩
どんな職場でも自分より使えない奴がいることなんて珍しくない。
けど、使えない奴を使えないからって弾いていたら、仕事は回らないんだよ。
星雲賞の「図書館戦争」、ブクログ本屋大賞の「植物図鑑」、ドラマ化され最近も特別版が放映された「フリーター、家を買う」などで知られる有川浩先生の作品。
春川巧の劇団「シアターフラッグ」は、借金により存続の危機に陥っていた。兄の司に300万円を工面して貰うが、2年以内に劇団の収益で返済できなければ劇団は解散という条件を突き付けられる。プロの声優・羽田千歳も加入した劇団の運命や如何に――
2巻目となる今巻。
1巻では、300万の負債を負って今まで通り立ち行かなくなった劇団が、様々な手法で問題解決に当たる様子がメインでした。
この2巻では、それよりは寧ろ個々の人物同士の絡み、人間関係、特に男女関係の描写にドラマの比重が置かれている印象です。
それも、キャラクターの動くままに任せるというスタイルの有川浩先生のあとがきを読んで納得。
1巻ではちょっと多いように感じた登場人物たちでしたが、今巻では万遍無くスポットライトがあたって過不足なく感じられました。
起こるイベントに取り立てて特別な事はないのですが、演劇関係者であれば共感でき、門外漢であれば「へぇ、そういうものなんだ～」と楽しめる絶妙なバランスであると思います。
舞台公演で差し入れの花を貰って困るエピソードや、オーディションの件、閉じた経済活動の件などは、とても「あるある」です。
契機があっても演劇から足を洗えないのは、演劇にすべてを賭けるなんて決意の奴より、楽しくてついずるずる続けちゃったってのが多数派だよ
というセリフにも非常にシンパシーを感じます。
「俺が一番牧子を上手く使えるんだ！」という巧がアムロに見えなくもなかったという、どうでもいい雑感もありつつ。
演劇や劇団に興味が有る方にオススメです。
70点。