いつも 夕飯の後は母が食器を流しへ下げてくれ、その後は 一緒にテレビを見る。

テレビを見ながら母が うたた寝を始める。
私が 布団に行くように 声をかける。

これがいつもの光景。

その日も声をかける。
「お母さん!眠いなら布団に行きや」

う~ん  

と返事をして動かない。
いつものことだ。

だけど しばらくすると 母の唸るような声が聞こえる。 
テレビを見ていた私は
「もぅ~、何唸ってるんやぁ?」
と振り向いた。

えっ?


顔は左を向き目は開いてるけど視線は合わない。
口元は右に向いて左手は何かを掴もうと伸ばしている。
右手は動かない


脳梗塞や❗


震える手で救急車を呼んだ。
上の子に下の子供達をお願いし、仕事中の旦那に帰って来て欲しいと連絡した。

救急車はわりとはやく来てくれて、保険証といつも飲んでる薬を持って来るように言われた。


どうしよう
どうしよう
どうしよう

あんなに手足が震えた事はない。

救急隊員の方に名前と住所書いて下さいと言われたけど断った。
書けない。震えすぎて。


通院していた病院は その日脳外科の先生が不在との事で 近くの総合病院に運ばれた。


ヤバいどうしよう
絶対、麻痺が残る
どうしよう介護になる
どうしよう


どうしようしか頭に浮かばないまま 母の診察が終わるのを待った。

先生に呼ばれて説明される。
「やはり脳梗塞ですね。4時間以内に処置をしないといけないのであまり時間がありません」
「点滴か、手術なんですが手術の方がいいと思います。このままだと寝たきりかお亡くなりになります」

はい。また言われました。
母が亡くなるって。

一瞬迷った。助かっても麻痺は確実だろう。
母も私も辛いだけじゃないか?

私は絶望する母を支えられるか?

でも、助かるかもしれない命なら助けてもらおう。
私が今、お母さんの寿命を決めちゃいけない。 


誰かに相談したところで結局は私が決断しなきゃいけないし、何より時間がない。

同意書にサインして手術が終わるのを待った。