「万有引力の法則と大リーグボール養成ギブス」
| 「万有引力の法則と大リーグボール養成ギブス」 以前、お客様のところで開催された創立記念行事に出席してきました。 A社様の当該行事は大変ユニークです。というのは、毎年、祝宴前に、社員さんによる研究発表会を開催しているからです。 総勢30名ほどの組織なのですが、職制別、グループ別に1年間をかけて勉強・準備をし続け、その成果を発表しあう、というもので、よくもまあ忙しい日々の中で(この会社はシフト制による勤務で、なかなか皆が揃うのは大変なのです)、ひとつの課題に向けて努力を続けられるものだ、と感心します。 もちろん、1年間の中では、目の前にある仕事と勉強会の両立で悩み、根を上げそうになることもあるようですが、それでもひとつの区切りとして発表の場を設けるメリットは計り知れません。 組織は、必ずや疲弊し風化します。各人のモチベーションもしかり、です。 創業当初、入社当初が一番健全でテンションが高く、徐々に下がってくるのが普通です。その証拠に、入社後6ヶ月目に、やる気のある社員は38%も存在するのに、入社後3年から10年たった頃には、やる気のある社員は22%と減少し、反対に会社に反感を感じる社員の比率は56%にも上ると言う統計があるほどです(*ギャラップ社データ:仕事に対する「やる気」と雇用期間より)。 ここで問題なのは、反感を感じても退職するわけではない、という部分です。 半数越えの人間が「反感を感じつつ社内に居続ける」という事実は、経営者にとって「見たくない現実」そのものではないでしょうか。 私は、かような現実を「万有引力の法則(?)」と呼んでいます。 全てのことは上から下に落ちてくる、と言う意味です。つまり、放っておいて何もしなければ(個人レベルで考えても)、・年とともに容色・体力・能力・脳力等が衰え、筋肉は垂れ下がる(日々実感)・人間関係は緊張感を失いマンネリ化する(夫婦がいい例)と、ろくなことはありません。 組織とて、個人の集まりですから例外であるはずがないのです。 残念ながら、「感謝、思いやり、感心、承認etc」といった人間にとってプラスの感情は、時間とともに薄れ、「不安、怒り、不信、敵意etc」といったマイナスの感情だけが増幅していくように感じます。 更に、この頃は、マイナスの感情よりも始末の悪い「無関心」がはびこっているようにさえ感じます。 以前、ある女優さんが書いた美容レクチャー本を読みました。この方は抜群のプロポーションと美しさを誇っていて、その当時、若い女性の憧れでした。 「少しでもあやかりたい」という気軽な気持ちで読み始めたところ、あまりの凄さに早々にげんなりしてしまいました。なぜなら、彼女の自由時間のほぼ100%近くは、己の美を磨く時間に当てられていたからです。 寝ている時間でさえ、美しさ保持のために時間設定されていました。スポーツアスリートが、大半の時間を己の「技」向上のために使っているように、彼女は時間とお金とエネルギーの大半を「美」という対象に集中投下しているわけです。 それゆえに、彼女は類まれな美貌を維持し、自らの商品価値をキープしていられるわけですね。「あなたに出来るか?」と問われれば、「できない、できなかったから今の私がある」わけです。 ただ、ここで学ぶべきことはそんな敗北感ではありません。「もともと美しい人でさえ努力をし続けている」という事実なのです。 きっと、彼女は誰よりも分かっているのだと思います。 自然に任せていたら、今日の美貌さえ維持できないこと、維持することさえ努力が必要なことを。だからこそ、1日の日課を決め、それに沿ってメニューをこなし、ほんの少しの妥協も許さないほど主体的に努力をし続けているのでしょう。 素地のある者が強烈な願望を抱き、ストイックに努力し続ければ、まさに鬼に金棒であることがよく分かります。 それに比べ、私達の大半は才能という素地もなければ、強い願望もなく、かつ努力も嫌い、ときているわけです。 それなのに、昨今「社員の自主性に任せて長所を引き出そう」という人材マネジメントが主流になりつつあるのは不思議な話です。 ちなみに、日本中を興奮させたWBCの選手たちは、各々が一流だから、監督は黙って任せていられたわけでしょうし、かの女優さんも一流だからこそ誰に管理されなくても自ら努力できるわけで、そこを拡大解釈してはいけません。 人材マネジメントを考える上で、ごく一部の例外を除き、大半のケースは「人は本来怠け者である」と考えて事に当たるほうが適切であろうと思います。 前述したA社様も、経営方針として勉強会を位置づけ、就業時間中に勉強時間を割り当て、かつ発表の場を年に1回強制的に設けているからこそ成果物が出来上がってくるのであって、強制的な仕組みがない中では、どれほど待っても何一つ成し遂げられないでしょう。 この仕組みを私は、「大リーグボール養成ギブス(古すぎますね)」と呼んでいます。昔見た「巨人の星」の世界ですが、毎日、父親である星一徹が息子飛雄馬に強制的に装着させ、親子で訓練に励んだギブスの名前です(結果としてこの訓練により飛雄馬は大リーグボールという無敵の技を習得する)。 実際、現実のスポーツアスリートの中でも、星一徹、飛雄馬のように、親が指導者を買って出て、共に精進してきたというケースが多いのは単なる偶然ではないでしょう。 それを思うと、私たちはあまりに簡単に「人材育成」を考えている気がします。また、そもそも「人材育成なんておこがましい」とさえ思います。いい加減、人格が出来上がってきた年齢の社員に対し、少し鼓舞するくらいで育成が出来るのなら、子育てで悩む親は皆無になるでしょう。 会社の中で、経営者が出来ることは、 ①万有引力の法則に則り、組織及び社員のやる気を低下させないような刺激策を考え ②それを強制的に実行させ続け ③挫折させない為の支援をして ④小さなゴールごとに、他者に認めてもらえる場(例えば発表会のような)をセッティングすること、そして、結果として ⑤「達成感」を身体で覚えてもらうこと、なのかもしれません。自社で働く社員に技を習得させる機会を与えず、故に仕事に対する達成感を抱かせたこともなく、反感を持たせたまま在籍させ続けるのは、まさに「社員に対する無関心」ということに他なりません。 この1ヶ月、WBCに異常なまでに感情移入しながら一喜一憂する人たちを見て、その後、高速道路1,000円に踊らされ、休みの度ごとに遠出をする人たちを見るにつけ、1日の75%を占めると言われている仕事には希望を持てず、残り25%の私生活で精一杯気晴らしをしようという人々の、やり場のないエネルギーを感じていました。 でも、見方を変えれば、プロの技に憧れ、かつ休みを返上してでも遠出する行動的な人々がたくさんいる、ということでもあり、彼らのエネルギーを仕事に向かわせる仕組み作りこそが、人材マネジメントの本質であるように思うこの頃です。 |
「不景気どきの身の処し方」
| 「不景気どきの身の処し方」 毎日、新聞を開けば暗いニュースばかり飛び込んできて、放っておいたら確実にテンションが下がる毎日が続いています。 大手製造業や自動車産業といった、言わば経済界の優等生が失速し、株価の下落で、むしろ資産をお持ちの裕福層のマインドが冷えてしまった今回の不景気。 大方の庶民には、まだまだ特別な実感はないはずなのに、人々の将来に対する不安感は、すっかり消費意欲を減退させてしまいました。 そんな中で、私もまた、新たな波に翻弄される日々が始まっています。 ・仕事がなくて生産調整をせざるを得ない ・人員整理をしたい ・賃金・人事制度を見直したい ・今までは気にならなかった労働者の働き振りが非常に気になる ・辞めた労働者からあらゆることでクレームが入る etc。 いろいろな案件が怒涛のごとく押し寄せてきた一ヶ月でした。 予想していたとは言え、よほどの覚悟がないと自分自身が飲み込まれてしまいそうです。 目の前に突きつけられた問題を処理するだけの時間の中で、「当たり目に祟り目」といったクレーム案件も入り込み、すっかりナーバスになってしまった私は、「誰にも会いたくない、どこにも出かけたくない」といった気分で週末を迎えました、そんな2009年の3月のある休日のことです。 突然「そうだ、米沢に行こう!」と思い立ち、片道2時間半車を走らせたのは、どこかでこの停滞した空気を払拭したかったからなのでしょう。 かの地では今、「天地人博2009」というNHK大河ドラマにちなんだイベントが開催されており、めずらしく番組を視聴している自分としては、大いに興味のあるところでした。 ドラマとタイアップした展示場は興味津々で、めずらしくパネルを読み込みながら歩を進めていると、私の目に、ある文字が飛び込んできました。 「上杉鷹山の藩改革」という文字です。鷹山は、直江兼続の死後148年後に17歳で9代目米沢藩主になり、破綻状態の藩財政を56年かけて再建したことで知られる人物で、もともと米沢の中では直江兼続よりも著名な存在です。 「リストラ(この場合、解雇と言う意味)なき財政改革」ということで、小渕首相の時代に一時話題になった人物でもあります。 徳川時代における米沢藩は、他の藩がそうであったように、幕府の無理難題(参勤交代、土木工事の無償負担等)を実行する為の膨大な支出と、大勢の家臣の存在により借財が膨らみ、改革を余儀なくされていたにもかかわらず、重臣たちの改革推進への反発や、度重なる天災の影響もあり、その財政基盤は弱体化する一方だったと言われています(今の日本や、企業の実態とそっくりなのに驚きます)。 そのような中で、鷹山が取り組んだ藩改革は、 ①意識の改革 ②教育の改革 ③新たな産業を興すこと ④財政改革という4本柱によるものでした。 私の目は釘付けになりました。 早速、「上杉鷹山の秘密 新谷博司著」という本を買い求め、貪るように読みました。 現状打破のヒントが満載でした。以下、抜粋すると、「組織を動かすには、トップに魅力があること、打ち出す方針に夢と現実性があること、実行する者にとってもメリットが感じられることが必要。 ① 人件費負担が高くとも削減できず、多額の借金を抱えている現状を認識すれば、収入を増やさないと収支バランスが取れない。方針を打ち出す前に現状認識をしっかり行い、次いで甘え、妥協をなくし、具体的な対策を講じること。精神論でなく、目に見えて収入増、経費削減に結びつく行動が必要。 ② 改革は、守り(倹約)だけでなく並行して攻め(積極展開)がないと生き残れない。 ③ 厳しい要求は、それが成し遂げられた時の「良くなるという夢」を与えないと実りは少ない。 ④ 厳しい計画の遂行には人間愛が必要。 ⑤ 社外ブレーンの有効活用(社内の人間は、経営者に厳しい建言は言えない)。 ⑥ 改革には短期と長期のものがある。長期間かかるものは、自分の没後も考えて「方針や遺言」にして残しておく。 ⑦ 収入に見合った支出体制にしないと財政は破綻する。」 ものの見事に言い得ています。ともすると、経費の削減(特に人件費カット)だけに目が向いてしまいがちな改革ですが、同時に新たな収入源の確保も進行させなければ、その先に未来はないと言い切っています。 なぜなら、何時の世も「現状維持=衰退」だからです。 自分自身がひねくれ者なのかもしれませんが、順調な時は「浮かれない」事を頭に置き、不調な時は「停滞しない」ことを考えてきたように思います。 振り返ってみれば、それなりに順調にいっていた労務士事務所を「元気サポート」に変えたのは、平成14年、不況の真っ只中でした。 平成11年バブル崩壊の後、痛みだらけのリストラに翻弄された後で、己の仕事の限界をいやと言うほど思い知らされ、無我夢中で経営の勉強を始めたのは、「経営を知らずして労務問題は語れない」と悟ったからです。 「人材と経営」という方向にどうしても進みたいと思いました。 むろん、半年や1年で芽が出るわけもなく、「人材と経営」を機軸にしようと決意するまで足掛け2年かかりました。もともと労務士の範疇でない業務展開を始めたとき、同業者からは変人扱いされ、残念ながらスタッフも入れ替わらざるを得ませんでした。 「元気サポート」という、まったく無名の会社名を知ってもらい、曲がりなりにも「人材と経営」分野の仕事を依頼されるようになるまで更に何年もの月日を要しました。 思えば、不況が原動力になって行動してきたことになります。 順風満帆の時は、いろいろな問題がカモフラージュされがちです。ところが、逆風によって、状況は一変します。見たくない現実を突きつけられ、立ちすくむ者もいれば(守り)、そこで初めて覚悟が決まる者もいるように思います(攻め)。 |
「幸せのPM理論」
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