ねこじぞう
そこに行けば 逢いたかった猫に逢えるという
何処かあるという
夜の静まりかえった 墓地の一角 共同墓に手をあわせながら
ねこじぞうを想っていた
ならんだ塔婆に書かれた名を目で追いながら
塔婆を撫でてもそこには ぬくもりも 柔らかな感触もありはしない
物言わぬ 塔婆に そっと話しかける
『ワンちゃんの友達もできたかな? 寂しくはない?』
寺の外灯にぼんやりと浮かぶ 塔婆に書かれた名達を目で追う
リボンの巻かれた塔婆 髪飾りのついたもの
みなそれぞれの 家族の想いがこもったおくりもの
『たまには 遊びに来てね 時々ここにも来るけど・・・・・』
捨てられた子猫 捨てられた子犬 時には老犬も・・・・・・・
君もそんな中の ひとりだった だけど 一緒に帰った日から
大切な家族・・・・・・・・・・・
もうどれほどの子達を見送ってきただろうか
別れはいつも辛く 時に心にポッカリと穴を開ける・・・・・・
家族という名の 紙切れがある
家族という名の絆がある
名ばかりの家族があり 種も血も越えた家族がある
けっして言葉では 理解し合えなくても 心繋がる時を感じる
ねこじぞう 誰かが忘れた 忘れ物を思い出させてくれる
そんな お地蔵さま なのかもしれない
辿りつこうとしてもつけなくて ふと目を落としたときそこに佇む
ねこじぞう ってそんな地蔵尊かも・・・・・・・・!?
道端で誰に気づかれることなく しずかに今日も佇んで・・・・・・
しずかに 昼寝を楽しむかのように しずかに優しく・・・・・・・
Photo 2012.08.17 くらしの植物苑&川村記念美術館
『ねこじぞう』 : 池田さとみ著