たびだち 
 
 たびだち それはとても突然で とても唐突で・・・・・・・
 君がやってきたのは 7月1日 そしてたびだったのは 6月31日
 
 捨てられた子猫 それが君 
 鳴いている 君を見て わたしは どうしても連れ帰りたくなって・・・・
 
 
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 まるで どこに行くのかわかっているかのように
 君はわたしの車の中で 嬉しさと 好奇心のおもむくままに動き
 そして わたしの膝の上で眠りについた 
 身体中を 泡だらけにされて でも乾いた後はぐっすりと・・・・・
 
 君の名前は 帰る頃には決まっていた
 『チャチャ』 茶色い毛色のせいじゃない 
 ひょうきんで 明るくて 可愛らしさが そうさせた・・・・・・
 
 曲がりシッポもひょうきんで 君にはお似合いに想えて
 
 わたしが出掛けるとき 君は寂しげな色を瞳に浮かべ
 わたしが帰ると 真っ先に飛んできて わたしに甘えた
 
 好奇心の塊のような子
 それが君・・・・・・・
 
 
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 君は 甘えるとき 抑えきれなくなると よく噛んだね
 わたしは 君が噛むとき 
 トラウマとなった 寂しさがと 不安がフラッシュバックで交錯して?
 そんなことを 痛みの中に想っていました
 
 まだ暫くは 時間がかかるのかもしれない
 いつか 君がほんとうの安心を得ることができれば やがて・・・・・・
 
 しかし その想いも いまは意味を喪ってしまった
 
 君は わたしの行動に いつも興味を示し どこにでもついてきて
 
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  そんな君を わたしは 子供のように想っていた
  きっと 死ぬまで君は子供のままなのだろうと・・・・・
  
  たびだち それは あまりに唐突でした・・・・・・
  しかし わたしには
  なぜか 予期した出来事のように おもえていました
  わたしの中にあった 一抹の不安 それが現実になった
  ぬくもりを失ったからだは 冷たく固く
  けれど 柔らかな毛の感触だけはいつものままで・・・・・・
 
  眠る 君の横顔をなにも言えずに眺めていました・・・・・
  
  
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 君は そんなわたしを察してなのか
 家を出て行った後 疲れて眠るわたしが 目覚めたとき
 わたしの目の前に ふっと あらわれて こう言ったね
   
   『おとうさん ぼく いくね・・・・・・』
 
 それだけを言うと 君は すぅーと消えてしまった
 君がいなくなった家は すこし寂しいけれど
 わたしは いまでも君を感じつづけています
 
 庭で 花いじりをするとき 君は そばに来て
 興味深げな瞳を わたしにむける
 
   『おとうさん なにやってるの?』
 
 それだけ言うと わたしの周りで つかず離れず飛び回って 
 まるで 幼子のように いつも いつまでも・・・・・・・・・・
  
 
  Photo 2013.07.01~2014.06.28 自宅にて