　長いこと塾講師をしていると、かかわりを持つことができた生徒たちが大勢できます。そんな中でIM君とは１４年という信じられないくらいの長きにわたってかかわりを持ってきました。そんなIM君とも今年の３月末をもってお別れとなります。

　先週の事、感謝の気持ちを表すために、近くのショッピングモールに出かけ「リーガルのベルト」を買ってきました。そして、授業の終了を待って、４月から社会人になるIM君にプレゼントしました。IM君は、照れながら「丁度ベルトがダメになったので嬉しい」とカッコつけて受け取ってくれました。

　「私の力を必要としてくれる生徒がいるのであれば、喜んで・・・。」

　今から６年前の３月、北海道大学の総合理系に合格したIM君に「大学生講師として手伝ってくれるかい?」と尋ねた私にIM君は、「私の力を必要としてくれる生徒がいるのであれば、喜んで・・・。」と、とてもカッコいい言葉を返してくれました。「何を生意気なこと言っているのだ（笑い）」と私は心の中で思いましたが・・・。

　IM君が２つ違いのお兄さんが通っている私の塾に、お母さんに連れられて来たのは彼が小学校の５年生の時でした。私が話しかけても、お母さんの後ろに隠れて一言も口をきかない消極的な男の子でした。何日かの体験の後、自分の意志ではなくお母さんの「ここに通いなさい」の一言で、私の塾に通うようになりました。

　何でも「お母さん、お母さん」という典型的なマザコン（笑い）のように見えたのですが、勉強の方はコツコツと努力するタイプでした。小学校の時は大変優秀な成績をとっていた記憶があります。そのコツコツと努力する姿勢は、中学校に入っても変わらず勉学に励んでいました。しかし、「完璧主義者」なところがあり、必ず、試験が近くなると神経質になりました。「ぜんぜん勉強していない」が口癖。その言葉は、頑張っていたにかかわらず得点できなかったときの「自分はやっていなかったから」という言い訳の言葉だったのですね。しかし、言葉とは裏腹にいつも高得点を獲得してくれていました。

　そんな彼には「もう一つの顔」がありました。それは、素晴らしい絵の才能があるという事です。一時は美大も視野に入っていたようです。高校受験では札幌東高校に高得点で合格し、高校生時代は美術部に所属したIM君は、高文連で数々の賞を受賞しました。彼の作品は母校の廊下に燦然と輝いています。

　I・M君の高校生時代の素晴らしい作品です。（彼の母校の廊下に飾られてます）

　結局、IM君は、小学５年生から高校３年までの８年間は生徒として、北海道大学に入ってから大学院を含めて６年間は先生として、合計１４年間も私の塾にいたことになります。彼は今２４歳、したがって彼は人生の半分以上も私の塾と関わっていたことになります。

　お母さんの後ろに隠れて、私の問いかけに一言も口を開かなかった、おとなしくて絵が大好きで努力家の子供が、１４年間私のもとで少しずつ素晴らしい青年に成長する姿を私は見てきました。口下手でいつも「とつとつ」とした喋りの彼が、大学生時代は講師として一生懸命努力し「責任感」を手に入れ、同僚や生徒たちの信頼を彼流につかんだのです。

　そして、彼は今、社会へと旅立ちます。きっと私のもとで経験した「失敗して反省したこと」や「成功してみんなで喜んだこと」をいっぱいいっぱい胸の奥にため込み、立派な社会人になってくれることでしょう。

　「IM君頑張れ!」・・・と私は心からエールを送ります。

　トップゼミナールのホームページはこちらから　http://www.topzemi.co.jp/

I・M君の旅立ち「14年の足跡」・・・。