ヒゲマスターのブログ
Amebaでブログを始めよう!

グラスの雫№1 ジム・ビームその5

 久しぶりにお会いしたお客様とは、自然と地震の話になってしまう。太平洋戦争を体験した方たちが、戦中の話や戦闘の思い出に花を咲かせるのに似ているかもしれない。
 震災後に北口市場が潰れて平地になった広場でおこなわれたジャズコンサートの話に移った。
「あの時に中藪啓示さんにお会いして…」
 灘元氏が常連さんの1人の名前を出した。
「トップウインも中藪さんに紹介されたのでしたね」
 私の質問に灘元氏はしばし沈黙した。私は灘元氏が口を開くのを待つ。
「こちらの紹介は鈴木さんからなんですよ」
「鈴木さん?」
「この近くにジャズライブバーがあるでしょ」
「ええ。コーナーポケット」

グラスの雫№1 ジム・ビームその4

「違いですか。バーボンは法律で細かく規定されていますからね。そうですね、ジム・ビームは低い目のアルコール度数で蒸留されます。樽で寝かせる場合も低い目ですね」
「え?80度で蒸留されるのでは?」
「いいえ。80度以下なんです。樽熟は62,5度以下」
 知らなかった。80度に決まっているのだと思っていた。80度以下なら味わいに違いがでやすい。アルコールが80度という事はそれ以外の20パーセントが不純物。味はその不純物に影響される。材料を芋であろうが、トウモロコシであろうがアルコール100パーセントに蒸留すれば味はまったく同じだ。不純物の割合が多ければ複雑な味わいを持つ可能性が高くなる。
「飲んでいただけますか」
 灘元氏にうながされた。私はショットグラスに光る琥珀色の液体を口にふくんだ。しばらく、目をつむる。
「柔らかさ、アルコールと樽からくる甘さ、それに酸味を感じます。以前気になった苦味はかなり遅れてからきますね」
「柔らかさですか。マスターらしい表現ですね。これからもジム・ビームをよろしく」

グラスの雫№1 ジム・ビームその3

「マスターもいかがですか」
「ありがとうございます。では、私もジム・ビームを」
 私は店内では自ら飲まないことに決めている。どうぞと言われれば、いつも喜んでいただく。私はショットグラスにジム・ビームを注いだ。
「記憶によると、以前の店では、ジム・ビームを置いてなかったのでは…」
「はい。ジム・ビームのライのほうを置いてました」
「何故?」
灘元氏の記憶力にも驚かされるがどうして置かなかったのかとたずねられても…。
「ジム・ビームは渋みが勝ってる様な気がしたんです。それなら、もっと渋さに特徴のあるライウイスキーをと思いまして…。棚も小さくて色々置けなかったという事情もありますが」
「なるほど。そうですね。ジム・ビームは他のバーボンに比べてライ麦の比率が高いのですよ。ご存知でしょうが…」
 そうだったのか。知らなかった。
「他に他社と違う点はあるのでしょうか」