今回は政治・行政的な用語が多めかもしれません。
「民主主義」ってとても大事な概念ですが、ちゃんとわかっていない人が少なくないように見受けられます。
「任意団体」という言葉に対して、私は「強制団体」という言葉を使います (Wikipedia では「強制加入団体」と呼ばれています)。ある条件を満たすと強制的に加入となる団体を意味しています。
典型的な強制団体は市町村 (基礎自治体) です。○○市に住んでいたら自動的に○○市民になりますし、「オレは○○市の市税を払わない」ということもできません。
強制団体の場合、「強制的に加入となったのに発言権・投票権がない」という状態は大変よくないです。なので、基本的に全員に発言権・投票権が認められます。(未成年者など、有権者に含まれない人もいます。)
別な例で考えましょう。
あなたは少々遠方 (自家用車で1時間半程度) の将棋大会に参加することにしました。会場は公共交通機関では大変行きにくい場所にあります。あなたは自家用車を持っていて、あなた自身が運転して会場へ行くつもりです。
近隣に住む A さん・B さんも同じ将棋大会に参加することを知ったので、あなたの自家用車に同乗させてあげることにしました。
A さんと B さんを同乗させてあげたら、A さんがこんなことを言い出しました。
「チンタラ走っていたら時間がもったいない。高速道路を使え。B さんもそう思うだろ? ほら、3人中2人が『高速道路』を選んだんだから多数決で決まりだ。日本は民主主義の国だからお前はこの決定に従わなければならない。逆らうのか? お前は民主主義に逆らう人間なんだな。まるで独裁者だな。」
この主張がおかしいことはすぐに分かるでしょう。「あなた・A さん・B さん」という3人の集団は強制団体ではありません。「自家用車に同乗させて会場まで送る」という契約に過ぎないのです。
町内会だと、こういう基本的なことを理解していないように見受けられる人が時々います。
障碍者へ町内会役員をやらせようとし、断られたら理由書を書かせ、結果として自殺に追い込んだ大阪の事件をご存知でしょうか。
町内会は任意団体です。強制団体ではありません。
将棋界はここまでおかしなことをいう人は少ないと思いますが、それでも「支部で決めたことだから、支部役員のお前は実行しろ」みたいなことを言い出す人がいそうな雰囲気は感じます。
最初だけは「支部の役員の成り手がいないんだ、できる範囲でいいから是非やってくれないか」なんて下手に話してくるのに、支部役員になったら「役員皆で決めたことなんだからやれ」のようになることを懸念しています。(まあ、支部だとそうひどいことにはなりませんが…)
任意団体は、「○○という業務・活動は担います。△△という業務・活動は担いません」というように業務・活動を個別に選ぶことができる状態が理想だと考えています。
以下は愚痴です。
「任意団体」と「権利能力なき社団」とが混同されていることも原因の1つかな、と考えています。
会社だと「社員」と「従業員」とが混同されていることに似ています。大きな株式会社なら、殆どの「社員」は従業員ではありませんし、殆どの「従業員」は社員ではありません。従業員は給与をもらい、社員は配当をもらいます。
政治用語だと、「独裁者」と「専制者」の意味の範囲、「民主主義」とその対立概念、といったあたりもよく理解されていない気がします。